日本の東の海上にある台風5号は勢力を維持したまま北上を続け、12日の朝から昼前にかけて東北の太平洋側に上陸する見込みです。岩手県宮城県青森県ではこれから12日午前中にかけて線状降水帯が発生し、東北の太平洋側を中心に平年の8月1か月分を大きく超えるような記録的な大雨となるおそれがあります。気象庁は土砂災害や低い土地の浸水、川の増水、氾濫に厳重に警戒するよう呼びかけています。

浸水が始まってからの移動は危険で、早めに安全な場所へ移動するようにしてください。

雨雲予報 データマップ

 

気象庁によりますと、台風5号は日本の東の海上を北西へ進んでいます。

岩手県など東北の太平洋側では局地的に雨雲が発達しています。

暴風域は無くなりましたが、台風は勢力を維持したまま12日の朝から昼前にかけて東北の太平洋側に上陸し、横断する見込みです。

【雨の予想は】

台風の接近に伴い、すでに岩手県の沿岸部を中心に雨量が増え、11日午後5時までの24時間に降った雨の量は久慈市下戸鎖では193ミリに達しているほか、宮古市で85.5ミリとなっています。

今後の見通しです。北日本では13日にかけて雷を伴って激しい雨が降る見込みで、12日は、非常に激しい雨となるおそれがあります。

特に、岩手県宮城県、それに青森県ではこれから12日午前中にかけて線状降水帯が発生し、災害の危険度が急激に高まる可能性があります。

また、台風の速度が遅いことから総雨量が増えるおそれがあり12日夕方までの24時間に降る雨の量は、いずれも多いところで▽東北の太平洋側で300ミリ、▽東北の日本海側で150ミリと予想されていて、▽13日の夕方までの24時間には▽東北の太平洋側で150ミリ、▽東北の日本海側で200ミリと予想されています。

その後も雨が続き、14日夕方までの24時間には▽東北の太平洋側で100ミリ、▽東北の日本海側で150ミリの雨が降る見込みです。

東北の太平洋側では警報基準を大きく超えるような記録的な大雨となる見込みで、わずか数日で平年の8月1か月分を大きく超える雨量となるおそれがあります。

先月、記録的な大雨となった東北の日本海側でも長期間にわたって大雨となるほか、新潟県や北海道でも12日から13日にかけてまとまった雨となるおそれがあります。

【風の予想は】

また、北日本を中心に風が強まり、12日にかけて非常に強い風が吹くところがある見込みです。12日の▽最大風速は東北で25メートル北海道で18メートルで、最大瞬間風速は東北で35メートル、北海道で25メートルに達すると予想されています。

【波の予想は】

海上は12日にかけてうねりを伴って波が高く、東北では7メートルと大しけとなり、北海道ではしけが続く見込みです。

【土砂災害や浸水 川の増水や氾濫に厳重警戒を】

気象庁は土砂災害や低い土地の浸水、川の増水、氾濫に厳重に警戒するとともに、暴風や高波に警戒するよう呼びかけています。台風の進路にあたる東北を中心に、これから雨や風が急激に強まるおそれがあります。

周囲で浸水が始まってからの移動は極めて危険で、過去の水害でも犠牲者が相次いでいます。自宅周辺のリスクをハザードマップで確認した上で崖や渓流などからは離れ、安全な場所で過ごすようにしてください。

大雨の警戒すべきポイント

大雨で発生の危険性が高まるのは「土砂災害」「川の氾濫」、そして「低い土地の浸水」です。警戒すべきポイントをまとめました。

【土砂災害】
まず、土砂災害です。

2019年の台風19号では、記録的な大雨により宮城県丸森町をはじめ各地で土砂災害が発生し、犠牲となる人が相次ぎました。

短時間に猛烈な雨や非常に激しい雨が降ると、山の斜面などの地中にしみこむ前に地表を雨水が流れ、表面の土を削り取って土石流が発生しやすくなります。

また、激しい雨でなくても、長時間、雨が降り続くと地中に大量の水がしみこみ、崖崩れや地すべりが起きやすくなります。

大雨となったあとは地盤が緩んでいるため、雨が弱まっても土砂災害が発生するおそれがあります。

「土砂災害警戒情報」や自治体の「避難指示」などが発表されていなくても、土砂災害が起きることがあります。

土砂災害が発生する直前には
▽斜面から小石が落ちてくる
▽斜面に亀裂ができる
▽斜面から突然水が湧き出す
▽「山鳴り」や「地響き」などの異常がみられることがあります。

こうした現象に気がついた場合には直ちに安全を確保してください。

斜面や渓流などには近づかず、離れた頑丈な建物の高い場所に早めに避難するのが最も安全です。

ただ、周辺が浸水するなど外への避難がかえって危険な場合は
▽建物の2階以上に避難したり
▽斜面と離れた側の部屋に移動したりするなど
少しでも安全性を高める行動を取るようにしてください。

【川の氾濫】
次に川の氾濫です。

「中小河川」では、短時間の激しい雨でも水位が急激に上昇し、氾濫の危険性が高まることがあります。

2016年の台風10号では、大雨により岩手県岩泉町で小本川の水位が数時間で上昇して氾濫し、高齢者グループホームで入所者9人全員が死亡しました。

一方、「大河川」では、流域の広い範囲で雨が降り続くと、氾濫の危険性が高まります。

2019年の台風19号の際には、福島県を流れる阿武隈川で記録的な大雨が降ったことで堤防が決壊し、大規模な浸水被害につながりました。

いずれの川でも、自分のいる地域で雨が降っていなくても、上流で降った雨によって氾濫が発生することもあります。

気象情報のほか、川の水位の情報や自治体の避難情報を確認し、早めの避難を心がけてください。

すでに氾濫が発生し、安全に避難することが難しくなった時には、近くの頑丈な建物や、自宅の高い場所に移動するなど、少しでも安全性を高める行動を取るようにしてください。

また、大雨となっている中で川の様子を見に行くことも危険なので、控えるようにしてください。

【低い土地の浸水】
低い土地の浸水です。短時間に猛烈な雨や激しい雨が降ると、低い土地では降った雨が排水できなくなり、浸水が発生することがあります。

浸水が始まる前の早めの避難が大切です。

ただ、浸水が始まっている中での移動は危険です。

外に避難するのが難しい場合は、自分のいる建物の高い階に移動するなど身を守る行動を取ってください。

線路や道路などの下を通る「アンダーパス」は大雨で冠水しやすく、気付かずに車が入り込み乗っていた人が死亡する事故もたびたび起きています。

大雨の中で車の運転はなるべく控えてください。

接近前に漁港では漁船など陸あげ

 

台風5号の接近を前に新潟県佐渡市の漁港では、漁船などおよそ20隻が陸にあげられていました。

サザエ漁を終えた60代の漁師は「きょうは早めに漁を終えた。あすはどんな天候になるか分からないが、被害がないといい」と話していました。

この漁師は午後から、漁船が高波に流されないように、定位置から1メートルほど高く引きあげた上で、船を固定する対策をとることにしているということです。

仙台市 ホームセンターに防災用品の特設コーナー

 

台風5号に備えて仙台市内のホームセンターでは防災用品を取り扱う特設コーナーが設けられ、午前中から買い求める人が相次いで訪れています。

仙台市宮城野区にあるホームセンターでは、10日夕方から台風に備える防災用品の特設コーナーを設けました。

店によりますと、11日の午前中は、ふだんより多く客が訪れているということで
▽土のうを作るための袋や
▽カセットこんろ用のガスボンベなどを買い求める姿が見られました。

また
▽ガラスが割れて飛び散るのを防ぐためのテープや
▽非常用電源についての問い合わせも多くなっているということです。

店を訪れた仙台市の70代の女性は「台風に備えて土のう袋を買いました。非常食や水などはふだんから備えをしています」と話していました。

ホームセンターの副店長樋口知典さんは「事前に備えることが災害が起きた場合の安心につながると思うので、わからないことがあれば私たちに聞いて備えてほしい」と話していました。

秋田 横手 桃農家が収穫作業急ぐ

 

台風5号の接近に備えて、秋田県横手市では桃の生産農家が風や雨で実が傷つくのを防ごうと、収穫作業を急いでいました。

このうち、横手市増田町の沼沢成悟さんの果樹園では、沼沢さんと友人の2人が「おどろき」という品種の桃の収穫に追われていました。

収穫は数日後を予定していましたが、実は風で葉や枝とこすれると傷がつくほか、雨に当たっても傷みやすくなることから11日は急きょ、ふだんの2倍の量を収穫したということです。

沼沢さんによりますと、先月の記録的な大雨では、水分を急激に吸収した実が膨らんで割れる被害もあったということです。

沼沢さんは「台風が直撃するのではないかと不安はかなり大きいです。このあと収穫を迎える品種もあるので、風や雨が強まらないよう願っています」と話していました。