【解説】小泉氏出馬へ 「小石河連合」の関係一変…どうなる自民党総裁選(2024年8月21日『日テレNEWS NNN』)

来月の自民党総裁選挙に出馬する意向を固めた小泉元環境相が21日、報道陣の前に姿を現しましたが、いつ出馬表明をするかは答えませんでした。その小泉元環境相について、3年前の総裁選と関係が変わった「小石河連合」や小泉元環境相が抱える“焦り”について、日本テレビ政治部官邸キャップ・平本典昭記者が解説します。
【独自分析】自民党総裁選、推薦人のメドがたった5人の「強み」は? 経験、刷新感、支持…5要素で比較
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鈴江奈々キャスター
「21日は自民党総裁選での3つの疑問を日本テレビ政治部官邸キャップの平本典昭記者が解説します。1つめは『関係一変“小石河連合”』、2つめは『“小石河”実力を独自分析』、3つめは『準備加速も…小泉氏の“焦り”』です」
■関係が一変した「小石河連合」
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鈴江奈々キャスター
「まずは1つめ、関係が一変した『小石河連合』ということですが、3年前の総裁選挙は『小石河連合』、つまり小泉進次郎氏、石破茂氏、河野太郎氏の3人がタッグを組んでいましたけれども、今回はその3人がそれぞれが出馬するとみられています。この変化はなぜ、起きたのでしょうか?」
政治部官邸キャップ 平本典昭記者
「大きく変わったと思うんですけれども、3人のうちの1人に直接話を聞いたんですが、こう言っていました。『前回は3人集まってようやく1人前で、強敵だった岸田首相の陣営に挑戦できたけれども、今回はそれぞれが1人で戦える実力を手にしている』と」
「どういうことか、構図を整理してみました。3年前、岸田首相が勝利した総裁選では、河野さんを石破さん、小泉さんが応援する、これが『小石河連合』でした。支持基盤を見てみますと、岸田さんには麻生副総裁をはじめ党内の幅広い議員の支持が集まり、選挙戦を制しました。これに対して小石河連合は、菅前首相の支援、あと注目なのが世論の高い人気、党員の支持を得て戦いましたが敗れたわけです。前回の総裁選ではワンチームだった3人が、今回はばらばらになりガチンコ勝負に挑むわけです」
「『昨日の友』が『きょうの敵』となったわけですけれども、支持基盤の変化を見ていきましょう。まず、影響力のある大物議員の動向です。今回、麻生さんは河野さん、菅さんは小泉さんの支援に回るとみられています」
「もう1つのポイントは、投票の半分を占める党員票の動きです。前回、小石河連合は世論の支持を背景に党員票はトップでしたが、今回この党員票が3人のいったい誰に多く流れるかが、今後の戦いの大きなポイントになっていくとみています」
■3人の実力を比較分析 現時点で優位なのは
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鈴江キャスター
「この党員票と議員票で動向が違うというところもこの総裁選のポイントの1つでもありますが、今の時点で小泉さんと石破さん、河野さん、誰が優位に戦いを進め始めているというのは見えてきているんでしょうか?」
平本記者
「まだ選挙戦が長いので、誰が1番有利かというのを分析するにあたって、まず3人の実力を比較分析してみたいと思います。日本テレビ政治部が独自分析したチャートです。『経験』『刷新感』『議員支持』『世論支持』『外交力』の5つの要素で分析します」
「まず石破さんですが、幹事長や閣僚を何度もつとめ、経験が豊富です。一方で自民党議員の中には『石破さんだけはいやだ』という声が結構根強く、党内支持が弱いのが特徴です。ただ、このチャートにない重要な要素が1つあります。それは先ほどお話しした自民党員の支持です。取材していると多くの自民党議員が、『3人の中でも石破さんが党員票は最も獲得するだろう』と指摘していて、これが石破さんの強みです」
「河野さんはバランスがとれているのが特徴です。外務大臣、デジタル大臣などの閣僚経験。そして麻生派の支持も見込めて、議員の支持も一定程度、獲得しています。ただ、脱派閥の中で派閥の支援を受けていることが、議員の支持が今後、広がらない可能性があり、陣営には不安視する声もあります」
「そして、小泉さんです。小泉さんの最大の強みは、43歳という若さと高い知名度からくる『刷新感』です。一方で弱点は閣僚経験は環境大臣だけで経験不足という点です。小泉さんは今後、論戦を通じてこうした不安要素などの指摘にどう反論し、払拭(ふっしょく)して、チャートの図をどう上に伸ばしていけるかが重要になっていくとみています」
■支持層のかぶりと安倍派との関係で焦り?
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鈴江キャスター
「その小泉さんですが、3つめの疑問、どんなことに焦っているんでしょうか?」
平本記者
「焦っている点はいくつかあると思います。19日に出馬表明した小林鷹之さんと小泉さんの戦略がまず対照的な点です。小林さんは低い知名度をあげるため長い選挙戦をフル活用して誰よりも先に手をあげて『先手必勝』を狙っています。一方、小泉さんはじっくり戦う戦略を今回とっています。その中で『想定外』の焦りが出てきているようです」
「具体的には支持層の『かぶり』です。20日自民党のある1回生議員に取材するとこう言っていました。『小泉さんにもお世話になっているけれども、先に小林さんから応援してくれと言われたので、今回は小林陣営でいきます』と話していました。実は、こういった議員が今回、結構いるようです。小林さん、小泉さんには刷新感を重要視する中堅若手議員を中心に期待が高まっていますが、先に小林さんが態度を決めて手を上げたことで小泉さんの支持層が流れている面があるわけです」
「もう1つの焦りは『安倍派』との関係です。今でも安倍派に影響力を持つ森元首相が小泉さんを推していると森元首相に近い議員が話しています。森元首相が安倍派のベテラン議員に対して支援するよう働きかけているという話も聞きます。こういった動きに対して小泉陣営の中には『安倍派の色が出ると裏金事件と結びついて刷新感がなくなってしまう』と心配する声があります。小泉さんは出馬表明のタイミングを模索していますが、こうしたネガティブポイントもどう払拭していくかも頭を悩ませているとみられます」