仕事と介護両立へ中小企業向け支援拠点 政府が来年度にも整備、地銀など運営想定(2024年8月4日『産経新聞』)

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仕事をしながら家族を介護する働き手が増加する中、政府が来年度にも中小企業向けの支援拠点の整備に乗り出すことが4日、分かった。従業員の仕事と介護の両立に向けた取り組みを、余力が乏しい中小企業が単独で進めるのは難しい。政府は、普段から中小企業と接点を持つ地方銀行などが拠点を運営し、経営者の意識づけや従業員への情報提供を行うことを想定。地域に根ざした拠点運営者が積極的に事業者に働きかける「プッシュ型」支援モデルを探る。
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高齢化を背景に仕事と介護に追われる「ビジネスケアラー」は増加傾向で、経済産業省によると平成24年に211万人だったが、ピークの令和12年に318万人に達する見込み。同年に介護離職者が11万人に増え、仕事と介護の両立困難による生産性低下などを合わせた経済損失が、約9兆2千億円に上る見通しだ。
政府の施策で先行した子育て支援に比べ「介護への理解度は低く、社会全体の対応が不十分だ」(政府関係者)との見方がある。特に人手不足に悩む中小企業では、多様な働き方が導入できなかったり、介護を要する社員の状況も把握しきれなかったりし、支援が行き届いていないと指摘される。
そのため政府は、地域の中小企業を対象とする「介護両立支援ハブ」を整備。経営者や人事担当者らに働きかけるほか、介護関連サービスの情報提供やセミナーの実施、地域共通の相談窓口の設置を進める方向だ。
経産省は8月末から12月末にかけて実証実験を実施する予定で、運営事業者を募集。事業の効果やどの程度の財政支援が求められるかなどを見極めた上で、来年度にも支援拠点を整備したい考えだ。(中村智隆)