想像を上回る実力だった北朝鮮ペア
【パリ(27日)=ペン・宮下京香】混合ダブルス1回戦が行われ、第2シードでメダル候補だった張本智和(智和企画)、早田ひな(日本生命)組が、リ・ジョンシク、キム・クムヨン組(北朝鮮)に1―4で敗れ、まさかの初戦で姿を消した。第1ゲーム(G)を6点差であっさり取られると、第2Gこそ奪ったが、最後まで“はりひな”のリズムは刻めなかった。21年東京五輪の水谷隼、伊藤美誠組に続く同種目日本勢2連覇の夢が、早くも途絶えてしまった。
1―3の崖っぷちで臨んだ第5G。10―10で張本のサーブを相手男子選手にチキータレシーブで返された。敗戦が決まると、ほぼ満席の会場は大歓声に包まれた。張本は悔しげにうなだれ、早田もぼう然と立ち尽くした。「悔しいしか出てこない。本当に悔しい」と張本は言葉少なげにうなだれた。早田も「押され続けてしまった。自分たちが戦術を変えられなかったのが敗因」と悔しさをにじませた。
北朝鮮は近年国際大会にほとんど出ておらず、データも少なかった。数少ない映像は見ていたが、五輪の初戦で当たる未知の相手は、脅威でしかなかった。「やりづらさがあった」と張本は振り返る。さらに相手は想像以上のプレーを出した。男子選手に強打で攻められ、早田は「(打球は)すごい威力。攻めても倍に返された。情報量が少ない分、迷ってしまった。北朝鮮の精度の高さを感じた」。フォアハンドをカウンターされ、苦しんだ張本も「相手は想像を絶する、素晴らしいプレーだった」と脱帽した。
五輪の独特の雰囲気があった。早田は3種目の最初の種目で、初めての夢舞台。東京五輪団体銅の張本は、2度目だが有観客開催は初めて。入場から観客の大歓声に包まれ、いいプレーには足をバタバタさせて喜ぶ異様な雰囲気。北朝鮮が優位に試合を運び、徐々に客席も相手のムードになった。「(相手の)勢いというのはあったと思う」と早田。プレーに影響はなかったという張本も「盛り上がりはすごかった」と実感した。
張本、早田ともにシングルスと団体戦の2種目を残す。早田は「あした(のシングルス)は、自分のやってきたことをやるだけ」と気持ちを切り替えた。張本も「終わったものはしょうがない。気持ちも技術も調整して、シングルスは1試合、1試合やっていくしかない」と顔を上げた。