兵庫・元県民局長死亡、片山副知事が辞職の意向 「斎藤知事にも辞職進言したが断られた」 県政混乱で引責(2024年7月12日『神戸新聞』)

兵庫・元県民局長死亡、片山副知事が辞職の意向 「斎藤知事にも辞職進言したが断られた」 県政混乱で引責(2024年7月12日『神戸新聞』)
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神戸新聞社の取材に応じ、自身の進退について話す兵庫県の片山安孝副知事=兵庫県
 兵庫県の斎藤元彦知事や県幹部に「違法行為があった」とする告発文書を作成した元西播磨県民局長が死亡した問題などを受け、片山安孝副知事が辞職の意向を固めたことが11日、分かった。片山氏は神戸新聞社の取材に「知事も辞職するよう進言したが、断られた。県政がここまで混乱している以上、誰かが責任を取らないといけない」と理由を語った。12日にも辞表を提出するという。
 片山氏は1983年に県に入庁し、人事課長や産業労働部長などを歴任。斎藤知事が就任した翌月の2021年9月から副知事職に就き、最側近として斎藤県政を支えてきた。
 今回の文書問題の対応では、県議会が地方自治法100条に基づいて調査特別委員会(百条委員会)の設置を決める直前に最大会派の自民党を訪ね、自らの辞職と引き換えに百条委の議案提出をしないよう求めていたことが発覚。県議会から「越権行為だ」との批判を受けていた。
 片山氏は取材に「議会とも、職員ともコミュニケーションが不足したのは、知事を補佐してきた私の不手際でもある。県政運営を誤り、職員に百条委という重い負担を負わせた責任がある」とも述べた。
 11日午後には斎藤知事と面談。片山氏は県政の混乱を収拾するため、自身と一緒に辞職するよう促したが、斎藤知事には「県民の負託を受けている」として断られたという。「責任の取り方に対する考え方が、私と知事で決定的に違った。私一人でも県政が停滞している責任を取らなければならないと考えた」と説明した。
 一方、元県民局長が作成した文書には、片山氏が斎藤知事の政治資金パーティー券販売で商工会議所などに圧力をかけたなどとする3項目の疑惑が記されているが、片山氏はいずれも「事実ではない」と否定。辞職後も百条委から出頭要請があれば出席し、疑惑を説明するとしている。
 兵庫県の副知事は片山氏と、同じく元県職員の服部洋平氏の2人が務めている。(前川茂之、金 慶順)
 
【元西播磨県民局長の文書問題】
3月中旬、兵庫県西播磨県民局長だった男性(60)が、斎藤元彦知事や県幹部らの言動を「パワハラ」「違法行為」などと告発する文書を報道機関などに郵送。県は男性を解任し、斎藤知事は文書内容を「うそ八百」などと批判した。県は5月に男性を停職3カ月の懲戒処分としたが、内部調査の客観性が疑問視され、県議会は6月、地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委員会)を設置。男性は7月19日に証人として出席する予定だったが、7日に亡くなっているのが見つかった。関係者によると、自死とみられる。

「一緒に辞任しませんか」と迫った兵庫県副知事、知事の答えは「辞めるという選択肢はない」(2024年7月12日『読売新聞』)
 
 兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラなどの疑惑を内部告発された問題で、片山安孝副知事(64)が11日、辞職の意向を固めた。斎藤知事は前日に県職員労働組合から事実上の辞職を要求され、「県政を立て直すのが私の責任」として職務を全うする考えを示したが、最側近である副知事が辞職すればさらに窮地に追い込まれることになる。
 片山氏は、斎藤知事が2021年8月に就任した後の同年9月に副知事に就任。約3年にわたり、斎藤知事を支えてきた。
 片山氏は11日午後、県庁内で斎藤知事と向き合い、「県政が停滞している。自分も責任を取るので、一緒に辞任しませんか」と迫ったという。片山氏はこれまでも斎藤知事に再三、辞職か出直し選挙に打って出るよう伝えてきた。しかし、斎藤知事はこの日も「県民の負託を受けている。辞めるという選択肢はない」と答えたという。
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 問題の発端は3月、西播磨県民局長だった男性職員(60)が一部の県議らへ配布した文書だった。「机をたたいて激怒する」などの部下へのパワハラをはじめ、斎藤知事に関する7項目の疑惑が指摘された。
 これに対し、斎藤知事は3月27日、「うそ八百」と男性職員を非難した。
 ところが4月16日、県産業労働部長が、知事が視察した企業から贈答品を受け取り、文書配布後の3月下旬に返却していたことが判明。5月には県が文書について「核心的な部分が事実ではない」とする内部調査結果を発表したが、県議会は不信感を強め、6月に真相究明のため、強い調査権限を持つ百条委員会を51年ぶりに設置した。
 男性職員は百条委で証言する予定だったが、今月7日夜、亡くなっているのが見つかった。
 片山氏は取材に対し、「知事の一連の対応にも問題があった。初動で『うそ八百』など、言葉が強すぎた。すぐに謝るべきだった」とし、「誰かが政治的な責任を取る必要がある。私は責任を取って辞任すべきだと思った」と語った。
 問題を巡っては、県職員労働組合が10日、斎藤知事宛てに事実上の辞職要求となる申し入れ書を提出。11日には、神戸市の久元喜造市長が記者会見で、「県政が混乱しているという印象は拭えない」と指摘した。