維新市長への問責決議に市議団反対せず…おひざ元の大阪でごたごた絶えず 万博でも逆風(2024年6月28日『産経新聞』) 

地域政党大阪維新の会」のお膝元でごたごたが目立つ。大阪府枚方(ひらかた)市では28日、教育長人事を巡り混乱を招いたとして、維新の市長が市議会で問責決議を受ける事態に陥ったが、与党の維新市議団は反対しなかった。先だって市長が提出した人事案に反対する構えも見せるなど隔たりは大きい。

【時系列で見る】伏見隆市長と議会を巡る主な経過

「退席とは議場で初めて知った。反対してほしかった」 28日の枚方市議会。閉会後、伏見隆市長は感情を抑えながら本音を漏らした。自民、公明両党や旧民主系など4会派が提出した決議案の採決を前に維新市議団10人が退席し、かばってくれなかったからだ。 市関係者によると、同日朝、決議案に対する態度を決める維新支部の会議が開かれ、地元選出の国会議員らも集まった。

「(伏見氏を)守ったらなあかん」「決議にはまっとうなことが書いてある」。意見は割れたが、最終的に退席という折衷案に落ち着いた。国会議員らも容認し、市議の一人は「決議に反対する理由がなかった」と述べた。 同じような会合は6月中旬にもあり、出席した伏見氏は市議団に強い口調で迫った。「他会派に配慮したところで何があるというのか」 議題の中心は副教育長を教育長に充てる人事案だ。伏見氏が同14日、議会に提出したが、維新市議団は会合で反対を決めた。通常考えづらい事態はなぜ起きたのか。

■教育長人事案が発端 話は3月議会にさかのぼる。

伏見氏はこの人事案を主要野党会派へ事前に打診したのだが、一蹴されてしまう。理由はさまざまだが「国政でも対立する維新との関係性がないとはいえない」(別の市関係者)。 結局、3月議会での上程を断念。正副議長と主要5会派は6月4日、早期決着を求める意見書を伏見氏に宛てる。維新市議団代表も名を連ねた。

しかし、伏見氏は3月議会で見送った人事案を6月議会に提出する。 議会側の反発は強かった。維新市議団もこの人事案には乗れなかった。伏見氏が取り下げなければ否決は明らかな上、他会派との関係悪化で、他の議案にも影響が出かねないためだ。 市議団には別の事情が見え隠れする。最大会派だが、過半数に満たず、議長ポストも2年連続で取れていない。ある維新関係者は「これ以上、他会派との間で摩擦を生じさせたくないというのも本音」とみる。

伏見氏が今月24日の議会で人事案の取り下げを表明し、騒動は収束したかにみえたものの、自身2度目の問責決議を受けた伏見氏の政治的ダメージは大きい。問責決議に反対しなかった市議団とのしこりも残る。

ある市議はこう言ってはばからない。「自身の思いで突き進んでも何も得られない。いいかげん理解すべきだ」

■自公とのさや当て激化

先の通常国会での政治資金規正法改正への賛否が衆参で異なるちぐはぐさに、国政政党「日本維新の会」に対する厳しい意見が飛び交う中、拠点の大阪では、次期衆院選を見据えた他党とのさや当てが激化しつつある。旗振りしてきた2025年大阪・関西万博への逆風にも苦しむ。

大阪府東大阪市では、野田義和市長が今年3月に専決処分した給料の2割削減や退職金ゼロに対し市議会は今月、「議会軽視」として大阪維新の会を除く反対多数で「不承認」とした。

野田氏は昨年の市長選でこれまで支援を受けた自民、公明から維新に〝転身〟し5選。裏切られた自公との対立が鮮明だ。

次期衆院選で維新が初めて公明と戦う衆院大阪6区の同府守口市。今月、市議会に社会教育関係団体への補助金に関する事務調査特別委員会が設置された。

議会側に説明なく交付対象が広がった経緯を調べるとしており、公明など維新以外の会派が設置に賛成。瀬野憲一市長は維新首長団の一人だ。

会場整備費の増額などから風当たりが強まる万博でも火の手があがる。元維新府議で、その後維新とたもとを分かった同府交野市の山本景市長は、府の子供招待事業を巡る学校意向調査に関し、調査の選択肢に「希望しない」がないと明かし、参加を強制する「踏み絵だ」と非難している。(矢田幸己)

 

伏見隆市長に対する問責決議
本市教育行政の執行体制にあっては、去る3月末をもって前任の教育長が辞職されて以降、後任の教育長が空席のまま、早3か月近くが経過しています。この間、前任の教育長の辞職が窺い知れるところとなった令和6年3月定例月議会の折から、新たな教育長の人事についての市長の意向に対し、正副議長や各会派において、賛同できない理由をお伝えしてきたところですが、議会側の意見を踏まえ改められることはありませんでした。
まずもって、言うまでもなく教育長の任命は、法に基づき議会の同意が必要であり、市長が所信表明や市政運営方針において度々「市民や市議会の意見をしっかり聴き、丁寧な説明と議論を重ねる」と表明して来られたように、市長と議会、双方の協議と一定の折り合いがあってこそ成り立つものと、申し上げておきます。
一方で、議会として、異常とも言える教育長を欠いた教育行政の執行体制を据え置きにすることは看過できず、また、市民への説明もなされない状況にあったことを踏まえ、正副議長及び全会派の総意をもって、6月4日付で市長に対し、「市民や議会への説明責任を適切に果たすこと」、「新たな教育長の任命同意議案について早急に調製し議会への提出を図ること」を強く求めたところです。
そうした中、同月14日、市長は突如、6月定例月議会の当初議案ではなく、追加議案として、この間の意向を一切改めることのないまま、教育長の任命同意に係る議案を提出されました。提出された議案を真摯に審議に付する議会の使命を踏まえ、各派代表者会議にて協議していたところ、同月21日、市長はまた唐突に、理由も示されることなく、当該議案の撤回を申し出られました。
市長は、この間の議会側の意見を踏まえることなく、また、反対する声を押し切ってまで、自ら相当の責任と覚悟を持って判断をされ、当該議案を提出されたはずです。
それを特段の理由も示さず撤回することは、議会に議案を提出することの重みを軽んじ、説明責任を果たさず、また、議会初め職員等関係各般にも混乱を来す軽率に過ぎる行いです。
さらには、議案の撤回を審議する同月24日の議会運営委員会において、取扱を十分に配慮すべき候補者の名前に言及され報道されるに至ったことは、この間、本件の重要さに鑑み丁寧に議論を進めようと努めてきた議会の意思を台無しにするものであり、市政の責任者の行いとしていかがなものか、苦言を呈さずにいられません。
よって、本市議会は伏見市長に対し、かかる一連の行いへの猛省を促すとともに、二元代表制の重みを再認識いただくこと、あわせて、今後において、本来あるべき教育行政の執行体制を早急に整えていただくことを強く求めます。
以上、決議します。
令和 6 年 6 月 28 日
枚 方 市 議 会