小池百合子か蓮舫か…負けられない自民党が行った「極秘の世論調査」に記された驚愕の数字とは!(2024年6月20日『現代ビジネス』)

自民党本部が行った「極秘世論調査」の中身
 東京都知事選挙が6月20日に告示され、来月7日の投票に向けて首都決戦の火ぶたが切って落とされた。
 最注目は、シンボルカラーやイメージなどから“緑のたぬき”と“赤いキツネ”の対決と評される現職の小池百合子都知事立憲民主党を離党した蓮舫参院議員の激突だ。
 2人とも党派色がつくのを嫌って政党の推薦を断っているが、岸田政権の与党の自民党公明党が小池支持を打ち出す一方、政権野党の立憲民主党共産党蓮舫氏を支持しており、与野党が首都を舞台に激突する構図だ。
 政治資金の不記載問題を契機に窮地に追い込まれている自民党公明党が危機感を募らせているのに対し、立憲民主党は東京15区衆院補選など各種選挙で勝利を重ねて勢いづいており、自民党内からは「東京都知事選挙での敗北は岸田政権の崩壊、自民党の野党転落に直結する」(自民党閣僚経験者)との声も聞こえる。
 選挙は水物。勝敗の行方は予断を許さないが、一つの参考になるのが自民党内に出回っている世論調査の資料だ。自民党関係者によると「この資料は、自民党本部が世論調査会社に依頼して作ったもの」という。
 調査は5月27日の蓮舫氏の出馬表明を受けて行われ、6月16日までにすでに3回行われている。1回目の調査は6月1日から2日にかけて行われ、結果は小池氏が43.1%、蓮舫氏が33.0%、石丸伸二・前安芸高田市長が8.1%など。「まだ決めていない・わからない」が9.2%だった。小池氏の支持が蓮舫氏を10.1%上回っており、現職の小池氏が優位に立っていた。この時点では、まだ小池氏は出馬表明していなかった。
 「同じような調査は当然、立憲民主党も行っているはず。恐らく蓮舫陣営は、政治資金問題の追い風があるので立憲民主党共産党が支援してくれれば10%程度の差なら引っくり返せると判断して出馬表明したのだろう」(自民党選対関係者)
立民の支持団体「連合東京」が小池支持に回ったワケ
 5月27日、蓮舫氏は出馬会見で「自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットしてほしい」という国民の声は「はっきりしている」「その先頭に立つのが私の使命だ」と強調。共産党などとの「信頼関係は大事にしていきたい」と共産党にエールを送った。しんぶん赤旗はこの発言を大きく報じた。
 5月29日には蓮舫氏が都議会の野党系会派の控室を訪問。「一緒に東京を作らせていただきたい」とあいさつし、共産党の大山とも子都議団長から花束を受け取った。蓮舫氏が立憲民主党だけでなく共産党との共闘をアピールしたのは、共産党組織力に期待したからだ。
 「前回の都知事選で共産党が推した宇都宮健児元日本弁護士連合会会長は約84万票を獲得した。これに立憲民主党、れいわ新撰組などの反自民の野党票や自民党批判の無党派票などを合わせれば200万票に届き、十分勝算があると踏んだ」(全国紙政治部デスク)。
 だが共産党色を強めたことで立憲民主党の最大の支持団体である連合労組が蓮舫氏に不信感を強めた。連合東京の組合員125万人の半分は東京都民だが、連合は共産党系労組と水と油の関係にあり、芳野友子連合会長は「共産党と考えが違う」として共産党が推す蓮舫氏を推すことはできないとの立場を表明。連合東京も6月19日、小池支持を決定した。
 連合の支援を受けているもう一つの政党の国民民主党は、東京15区補選で小池氏と連携するなど、もともと小池氏と関係が深く、共産党に傾斜する蓮舫氏と距離を置いている。
 「共産党の組織票に目がくらんで、蓮舫氏は、共産党アレルギーの強い連合や国民民主党の反感を買い、連合の反自民票の取り込みに失敗した。共産党からもらう票より逃がした票の方が大きい」(連合系組合幹部)との指摘もある。
小池百合子氏のパフォーマンスが炸裂
 それが反映したのか、政治資金問題の追い風にもかかわらず、6月8日と9日の自民党の2度目の世論調査では小池氏がわずかに支持を減らしたせいで支持率は40.3%、一方、蓮舫氏は前回より1.6%増やし34.6%。その差5.7%に縮まったものの、この時点ではまだ小池氏は都知事選の出馬を表明しておらず、それを考えると蓮舫陣営の期待ほど支持が伸びたとは言えない。
 小池氏が出馬表明したのは都議会最終日の6月12日、都議会本会議でのこと。同14日の会見で小池氏は、「小池都政をリセットする」との蓮舫発言に対し、私立高校授業料無償化など都民の支持を得ている政策までリセットすると都民が「困るんじゃないですかね」と一蹴。蓮舫氏は「リセット」から「一部継続」への変更を余儀なくされ、パフォーマンス上手な小池氏に、やや押し込まれた。
 この直後の6月15日と16日の3回目の調査では、小池氏の支持が43.6パーセントに増えたのに対し、蓮舫氏は32.1%に支持を少し減らし、差は11.5%に開いた。
 ただまだ支持候補を決めていない人が2回目調査時点で9.0%、3回目調査でも8.2%いること、そもそも調査サンプル数が少ないことを考慮すると、この調査通りの投票結果になる保証はない。あくまで参考資料に過ぎない。
 小池氏については、カイロ大学首席卒業に関する学歴詐称疑惑が繰り返し指摘され、小池氏の元側近の小島敏郎弁護士が18日、東京地検に経歴詐称で刑事告発。一方、蓮舫氏についても、8年前の民進党代表選出馬当時に騒動になった台湾・日本の「二重国籍問題」が再び取り沙汰されている。
 「だが小池氏についてはカイロ大学が卒業したと言っている以上、疑惑の追及の決定打がない。また蓮舫氏の場合もすでに8年前の話。両方ともインパクトに欠け、都民の投票行動に大きな影響を与えないと見られている」(前出デスク)
 果たして蓮舫氏の逆転なるか。
 
週刊現代講談社)/長谷川 学(ジャーナリスト)