-自民党は独自候補の擁立を断念し、小池氏の支援に回ることに
「誠に残念ながら、都議会の中から手を挙げるのを期待して、後輩の諸君の何人かに聞いたんだけど、立候補しようという人はいなかった。自民党に現在、かつての勢いとか自信とか誇りがだんだんに薄れてきてるのかなと。先輩として極めて情けない思ってるというのが実際の心境だね」
-国会議員にも手を挙げる人はいなかった?
「残念ながら、全く見られなかった」
-断った人たちの理由は
「正式に立候補の依頼をしたわけじゃありませんから。出る勇気がなかったんでしょう」
◆「都民のために小池氏を支えざるを得ない」
-自民党を飛び出した小池氏に対する「しこり」は
「(小池氏は)知事になって以降、直接的ではないけれど、自民党の協力も求めていたし、自民党もやっぱり都民のために支えざるを得ない。そういう意味では、最初のときのような敵ではない。かといって直接、わっしょいわっしょいやるわけにもいかない」
-わだかまりは残っている
-萩生田光一都連会長は小池氏支援に迷いはなかったのか
「個人的な話は聞いていないが、きちっと了解した上でのことだろう。本来はわれわれも萩生田君を中心にきちっと候補者を立てるべきだったが、萩生田君自身が(派閥の裏金問題など)さまざまな問題に対処しなくてはいけなかったからね」
-深谷さん自身はこの間、小池氏と直接話したか
「いや、話しておりません。都連の責任者から細かく報告は来てます。中には会わせようとした人もいたけど、もう会う立場でもない。引退してから10何年たってますからね」
◆蓮舫氏を共産が支援「自民としては都合がいい」
-どんな選挙戦になるか
「蓮舫氏は共産党が熱心にやっているから、構図が明確になって非常に良かった。『都知事を共産党に渡すわけにはいかない』という声が強まって、非常にやりやすくなった。共産党というのは最も大きな敵で、(蓮舫氏は)その代表になってしまった。われわれとしては小池氏をやる大義ができた」
蓮舫氏
-自民党は小池氏支援をどれくらい熱心にやれるか
「選挙戦になれば、これまでいろんなことがあったって、日ごとにますます力が入っていくに違いない。自民党を応援している300くらいの各種団体の代表者を集めて支援を呼びかけることを考えている。革新都政には断じてさせないという強い意志で、自民党は固まるだろう」
◆石丸氏陣営の選対幹部は深谷氏の娘婿だが…
「小田氏から真っ先に報告がありました。石丸氏が小田氏のところに相談に行って、力を貸してもらいたいと。候補者は極めていい人なんですよ。ものの考え方もしっかりしてるし、政策的な能力もある。小田氏が「どうだろうか」というから、(私は)「君の考えの通りやればいい」と。「親子だからと気にすることはない」「やるからには頑張ってやれ」と激励しています」
「小池氏に集約していくと思う。小田氏とは個人的なつながりがあるが、そういったこと(石丸氏の支援)を自民党都連に広げていく気は全くありません」
-今回、都内の首長有志が小池氏に出馬を要請するという動きがあった
「自民党都連として何か働きかけをおこなったというようなことは全くない。小池サイドの方で作戦を考えたんだろう。なかなかいい手だね」
-小池氏の学歴詐称疑惑は選挙戦に影響するか
「本当のことはわかりませんね。難しい話で、真実は分からない。マイナス面ではあるが、大きくマイナスに影響するという風には考えていない」
◆岸田政権の支持率「高くなる可能性はほとんどない」
「岸田さんは誠実で真面目ないい人なんだけど、なぜか不思議と支持率は低いままで、これが高くなる可能性もほとんどない。真面目な人って、派手なパフォーマンスがないから人気にあんまりつながらない。岸田政権はこの程度の支持率で、これからも際立って上がっていくことはないだろう」
「政権の人気、不人気はあるとはいえ、(自民党を支持する)強固な保守層は3割ある。世論調査で評判が悪くても、動かざる保守層がある限りは、そこまで恐れることはない。憲法改正をやらないとか、彼らが願っていることと違う動きをしたらだめだが、これが崩れない限り、世論がどういう形であろうと選挙は勝つ」
「小池氏の勝敗が、自民党の今後の選挙の勝敗と直接的なつながりがあるとは思わない」
◆茂木敏充氏に「天下を取らせたい」
-今秋には自民党総裁選がある。期待する「ポスト岸田」候補は
「茂木敏充幹事長がいい。私が通商産業大臣の時の政務次官として活躍した力のある人物だ。私の弟分で、この前も彼を囲んで一杯飲んだ。ただ、岸田首相をたたき落として茂木君にしようというところまでの動きは(党内の)了解を得られないだろうから、そんな激しいことは考えていないけれど、『岸田さん以外で誰か』と言われたら茂木しかいないし、天下を取らせたいと思っている」
-世論調査では茂木氏の国民人気は高いとは言えない
「国民の人気っていうのはよく分からない。国民の人気と、保守を支持する人気とは若干異質なものがある。3割の『岩盤保守層』が微動だにしなければ、必ず選挙は勝ちますから。強力な保守層は茂木氏を信頼している」
深谷隆司(ふかや・たかし) 1935年、東京・浅草生まれ。終戦を満州(現在の中国東北部)で迎える。早稲田大法学部卒業後、東京都台東区議(1期)、都議(1期)を経て、1972年から2009年まで衆院議員を通算9期。初当選同期は「YKK」と呼ばれた小泉純一郎、加藤紘一、山崎拓の3氏や石原慎太郎氏ら。自民党では中曽根派、渡辺派、山崎派に所属した。郵政相、自治相、通商産業相、自民党総務会長などを歴任し、2012年に政界引退。現在は自民党都連最高顧問、「TOKYO自民党政経塾」塾長を務める