東京への遷都論を初めて提唱したのは…(2024年6月14日『毎日新聞』-「余録」)

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ニューヨークのタイムズスクエアにも比べられる渋谷のスクランブル交差点には外国人観光客が集まる=東京都渋谷区で2024年3月31日午後0時50分、渡部直樹撮影
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都議会本会議で東京都知事選への立候補を表明後、記者の質問に答える小池百合子都知事=東京都新宿区で2024年6月12日午後2時47分、内藤絵美撮影
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立憲民主党に離党届を提出し、報道陣の取材に応じる参院議員の蓮舫氏=東京都千代田区で2024年6月12日午後1時5分、玉城達郎撮影
 
 東京への遷都論を初めて提唱したのは江戸後期の経済学者、佐藤信淵(さとうのぶひろ)という。「王都を建つるの土地は江戸をもって第一とす」。約200年前に江戸を東京、大阪を西京とする統一国家構想を打ち出した
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蘭学や農学、兵学などに通じ、鎖国の世にアジア進出を説いて戦前の国家主義者にもてはやされた異能の学者。「東京」に政府機関や陸海軍、大学を置き、国力向上を図る構想は明治維新の先取りともいわれる
▲交通の要所で諸国の物産が集まり、外洋につながる。長期にわたる首都にふさわしいと考えた学者の目は確かだったのだろう。維新後に遷都が実現し、大震災や戦渦を乗り越えて発展を続けてきた
▲今やニューヨークやロンドン、パリと世界的地位を競う。そのトップを決める都知事選に小池百合子(こいけ・ゆりこ)都知事が3選出馬を表明した。立憲民主党などが支援する蓮舫(れんほう)参院議員との「事実上の与野党対決」という
▲もっとも小池氏も裏金問題を抱える自民党とは距離を置きたいらしい。野党も一枚岩とは程遠い。自民党との接近を批判して対決色を演出したい蓮舫氏と、それをかわしたい小池氏のナラティブ(物語)の争いにも見える
▲政治でも相変わらずの男女格差が指摘される中、首都での女性対決は歓迎できる。国内総生産GDP)が4位に落ちた国力を考えれば、2割を占める首都の役割は増している。一極集中の弊害を正しながら、魅力ある都市として繁栄を保つにはどんな政策が必要なのか。地に足がついた論戦を聞きたい。