<徹底比較・最新版>クレカ積み立て「どこがお得」に変化あり 「dカード」を助っ人にマネックスが攻勢(2024年6月7日『東京新聞』)

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 NTTドコモと子会社のマネックス証券は6日、同証券でドコモのクレジットカード「dカード」を利用した投資信託の積み立てを7月5日から始めると発表した。今年から始まった新しいNISA(少額投資非課税制度)で人気を集めるクレカ積み立てをめぐり、マネックスdカードを通じて攻勢をかけた形。インターネット証券大手3社の還元率のお得具合はどう変化するのか。徹底比較した。(山田晃史)
dカードゴールドで「1.1%還元」
 マネックス証券は今回の発表で、dカードゴールドを利用してNISA口座で積み立てをする場合、積立額に関わらず上限10万円まで1.1%を還元すると打ち出した。各社のクレカ積み立て還元策と比べても、高還元の部類に入る。
 dカードdカードゴールド課税口座では、月5万円までは還元率が1.1%だが、5万円超7万円以内の範囲は0.6%、7万円超10万円以内の範囲は0.2%と還元率が変わる。既存のマネックスカードでの条件を引き継いだ形。マネックスカードとdカードの併用はできない。
◆ターゲットは「NISAまだ」層
 マネックス証券の担当者は「投資人口はまだまだ少ない。dカードは持っているけれどNISA口座を持っていない層を取り込みたい」と鼻息が荒い。マネックスカードよりも知名度の高いdカードとdポイントを導入し、SBI証券楽天証券の2強に対して巻き返しを図る考えだ。
 両社は、秋以降にdポイントで投資信託を購入できるようにするなどポイントの使い道も充実させる方針を既に発表している。
 他社はどうか。
◆SBIは「カード使うほど高還元」
SBI証券はクレカ積み立て額の上限が5万円から10万円に引き上げられる前のポイントの還元率は、三井住友カードの年会費無料のカードで0.5%、年会費のあるゴールドカードは1%、プラチナカードが2%、プラチナプリファードが5%だった。
 だが、投資信託の11月買い付け分以降は、年間の買い物でのカード利用額によって変化する仕組みに変わる。年会費無料のカードは10万円以上の利用で0.5%、ゴールドは10万円以上を0.75%に引き下げ、100万円以上は1%を維持。いずれも10万円未満だと0%になる。プラチナは利用額300万円未満が1%、300万円以上で2%。最も還元率の高かったプラチナプリファードはプラチナと同じ条件で500万円以上を利用すると3%に変更した。
 ただ、条件となる「カード利用額」は積み立てで使った分を含まないため、積み立てとは別に通常の買い物で利用額を達成しなければならないことに注意が必要だ。
楽天は「月15万円可能」が強み
 一方、楽天証券の還元率は上限引き上げ前と同じだ。年会費無料の楽天カードは0.5%、年会費のかかるゴールドは0.75%、プレミアムは1%。積み立てる投資信託によっては、カードの種類に関係なく1%の還元となるものもある。
 電子マネー楽天キャッシュを使った投資額の上限5万円も維持し、ポイントが付く決済の上限額は計15万円になった。ただ、楽天キャッシュ分の還元率は0.5%となる。
 広報担当者は「キャッシュレスの合計で月15万円の積み立てができるのが強み」と強調。積立額の引き上げをする人は増えているという。
◆「dカードゴールド」の還元率は高いが
 マネックスの新たな施策が発表されたことで、現状ではどの証券会社のポイント還元がお得になるのか。月10万円を積み立てる条件で比較すると、マネックスdカードゴールドが月1100ポイントとなり、楽天プレミアムとSBIのゴールドの1000ポイントを上回る。SBIでプラチナプリファードなどがマネックスの還元率を超えるには、年間300万円以上の買い物利用が必要になる。
 ただ、カードには年会費がかかることに注意が必要になる。ポイント還元率が高くても、ゴールドカード以上で年会費がかさめば実質的にポイントが目減りするためだ。
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◆「カード年会費」を考慮して比べると…
 そこで、年間の積み立てでもらえるポイントから年会費を差し引いた場合、最もポイントがたまる組み合わせを比較してみた。
 マネックスdカードゴールドは年間1万3200ポイントたまるが、年会費1万1000円を差し引くと2200ポイントしか残らない。年会費が実質無料のマネックスカードや無料のdカードだと年8760ポイントが手元に残り、こちらに軍配が上がる。
 楽天はゴールドカードの場合に年9000ポイントをもらえるが、年会費2200円を引くと年6800ポイントとなる。
SBIはゴールドの年会費が5500円だが、一度でも年間100万円以上の利用があれば無料となる。100万円以上の買い物利用額で年12000ポイント、10万円以上で年9000ポイントもらえる。
 この結果、いわゆる「100万円修行」の達成と買い物額の条件付きではあるが、いちばんお得なのはSBI証券になる。
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 YouTubeの資産運用系動画チャンネルで人気の「BANK ACADEMY/バンクアカデミー」を運営する小林亮平さん(35)は「5万円以下を積み立てる人はマネックス、15万円を積み立てたい人は楽天がいい。カード利用額が多く定期的に確認できる人はSBIがおすすめ。ただ将来、還元率などが変更される可能性もあるため、おまけ程度に考えて」と指摘した。
 さらに「資産運用で一番大切なのは続けること。日常生活に余裕を持てるよう給与の手取り額の5~10%を目安にするといい」とアドバイスする。