分かれ道がある。一方は正直村へと続き、もう一方はうそつき村…(2024年6月2日『東京新聞』-「筆洗」)

 分かれ道がある。一方は正直村へと続き、もう一方はうそつき村へ。あなたは正直村に行きたいが、どちらの道か分からない。そこに村人が通りかかる。正直村の村人なら正直に教え、うそつき村の村人ならうそをつく。さて、どう質問したら正直村への道が分かるか-
▼正解は一方の道を指さし、「あなたの村はこっちか」と尋ねるのだという。指したのが正直村への道であれば正直村の村人は「はい」と答え、うそつき村の村人も「はい」と答える。うそつき村への道を指していた場合は2人とも「いいえ」と答える
米大統領選挙という「分かれ道」の話となる。トランプ前大統領が不倫の口止め料を支払い、不正に処理したとされる事件でニューヨーク州地裁の陪審は有罪の評決を下した
▼34件の罪状すべてで有罪、大統領経験者に初の有罪評決-とくれば大統領選挙で返り咲きを狙う人には致命傷になりそうだが、そうならないのがトランプ氏のマジックか。トランプ支持者は結束を固め、選挙戦への影響はさほどでもないという
▼トランプ支持者には評決がうそつき村による「有罪」と映るらしい。つまり、真実は逆でトランプ氏は「無罪」なのだと。評決直後、トランプ氏に54億円もの寄付があったと聞き、驚く
▼分断が進んだ社会では裁判の評決でさえ同じ意味を持たぬか。有罪評決でも大統領選挙の行方は見えない。