熊本市電も全国ICカードから離脱へ 乗客半数が利用しているが…(2024年5月28日『毎日新聞』)

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全国交通系ICカードからの離脱方針を決めた熊本市電熊本市中央区で2024年5月28日午前10時33分、中村敦茂撮影
 熊本市内を走る路面電車熊本市電は2026年に全国交通系ICカード(全国IC)による運賃決済を取りやめる。市交通局が28日明らかにした。24年中にも全国ICを取りやめる地域のバスなどと決済方法を合わせるためだが、現状で乗客の半数以上が全国ICを利用しており、デメリットも現れそうだ。
 廃止する全国ICはJR系の「Suica(スイカ)」「ICOCA(イコカ)」「SUGOCA(スゴカ)」、福岡市地下鉄の「はやかけん」など全10種類。地域独自の「くまもんのICカード」は引き続き使える。
 熊本県内のバス・電鉄5社は、27日に全国ICの廃止を発表。機器更新費が高額になるためで、25年度からクレジットカードのタッチ決済やQRコード決済を導入するという。
 市交通局は、地域内の支払い方法統一のため同調を決定。5社から約1年遅れとなる26年1、2月ごろに全国ICを廃止、システム改修を進め、同年4月に新方式に移行する。
 熊本市電は23年5月にタッチ決済やQR決済を導入済みで、5社側と違って新たに増える決済手段は少ない。システム改修には2・2億円が見込まれ、現状維持のまま更新する2億円より高くなる。ただ、高コストの全国ICをやめるため「長期的には費用が抑えられる」としている。
 23年度の実績で、5社の全国IC利用が24%なのに対し、熊本市電は51%に達している。市交通局は「早めに分かりやすく周知していきたい」とするが、多くの利用者はカードの切り替えが必要となるなど影響は小さくないとみられる。
 利用者からは困惑の声が上がる。JR熊本駅で市電から乗り継ごうとしていた熊本市東区の専門学生の女性(21)は「市電もバスも、県外に出る時もカード1枚で済んでいた。また新しいカードを作らないといけなくなるのは残念」と漏らした。千葉県野田市から夫婦旅行で熊本を訪れた上野峰男さん(66)は「先に回った長崎でも全国系のカードが使えた。使い分けが必要になるなら少し不便になりますね」と話した。【中村敦茂】
 市交通局が運行する路面電車。1924(大正13)年8月1日に開業し今年100年を迎える。西区の田崎橋から(JR)熊本駅前を経由し東区の健軍町を結ぶA系統(9・2キロ)と、西区のJR上熊本から健軍町に至るB系統(9・4キロ)がある。22年度の乗客数は約890万人。均一運賃で大人180円、小児90円。
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