60~80代の「住宅ローン」「教育費」はほぼゼロ…意外と知らない「長い老後」のお金の実態(2024年5月25日『現代ビジネス』)

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 年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。
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 10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。
住宅ローンは現役世代に返済完了する人が多数
 以前「持ち家か賃貸か、60~80歳を自由に生きたいなら『持ち家が正解』」という記事で、60代前半の9割以上が持ち家というデータを紹介した。
 『ほんとうの定年後』では、住宅費や医療費などさまざまな家計支出について分析している。
 たとえば、住宅ローンについてみてみよう。
 どの年代で、どれくらいのローンを支払っているのだろうか。
 〈住宅ローンの平均返済金額は、30代後半から40代前半の5万円程度をピークに下がっていく。
 住宅ローンの支払金額は定年後の減少が著しく、60代前半は月1.6万円、60代後半が同1.1万円、70代以降は住宅ローンを返済している人はほとんどいない。
 現在のシニア世代は住宅バブルの真っ只中に住宅を購入した人も多く含まれる。それでもなんとか住宅ローンは払い終えている人がほとんどなのである。〉(『ほんとうの定年後』より)
 住宅ローンの支払額が、60代では1万円台、70代ではほとんどゼロとのことだった。
 つまり、多くの人は現役世代のうちに返済完了しているようだ。
 〈高齢期に住宅ローンの支払いが少ない理由は、多くの人は住宅ローンの早期返済を行っており、現役時代に債務を返し終わるからである。
 住宅金融支援機構「住宅ローン貸出動向調査」によれば、2019年度の住宅ローンの約定貸出期間は27.0年であるのに対し、完済債権の貸出後経過期間は16.0年であった。
 近年は資産価格の高騰や金利の低下による影響などから、住宅ローンの返済期間は長くなる傾向にあるが、現状では多くの人が20年以内には借入金を返し終えていることがわかる。〉(『ほんとうの定年後』より)
定年後の医療費は1万円台
 住宅費以外では、医療費がどれくらいなのか心配する人も多いだろう。
 が、実際のところ、それほどの額ではない。
 〈高齢期の家計を展望したとき、多くの人が不安に駆られるのはなんといっても保健医療費である。
 しかし、実際に高齢期の家計簿をみると、65歳から74歳において平均月1.7万円となっており、保健医療に関する支出はそれほど多くはない。〉(『ほんとうの定年後』より)
 住宅費に医療費、さらには教育費(60代後半からはほぼゼロ)などから解放された定年後には、生活費がぐっと下がる一方である。
 60~80歳を豊かで自由に過ごすために、どれくらいの支出がありそうなのか、どれほど稼げばいいのかを早めに把握しておくことが重要になるだろう。
 つづく「年収100万円、70~80代に幸せな人と不幸な人の『決定的な違い』」では、年収が激減する70代以降をどう生きればいいのか、データを確認しながら徹底的に読み解く! 
現代新書編集部
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ほんとの将来の「小さな仕事」が日本社会を救う (講談社現代新書) ペーパーバック新書 – 2022年8月18日
坂本 貴志(著)
年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70代男性の就業率は45%、80代就業者の約9割が自宅近くで働く……全会社員必読!知られていない定年の「仕事の実態」とは?
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【目次】
第1部 将来の仕事「15の事実」
事実1 年収は300万円以下が大半
事実2 生活費は月30万円弱まで低下する
事実3 稼ぐべきは月60万円から月10万円に
事実4 減少する退職金、増加する早期退職
事実5 純貯蓄の中央値は1500万円
事実6 70歳男性の就業率は45.7%、働くことは「当たり前」