立民に自公からツッコミ相次ぐ 政治資金パーティー全面禁止法案を出しつつ、岡田克也幹事長らは開催 衆院政治改革特別委(2024年5月24日『東京新聞』)

政治資金パーティーを全面禁止する法案を衆院に提出している立憲民主党大串博志選挙対策委員長が、6月に自身の政治資金パーティーを開くことが分かり、24日の衆院政治改革特別委員会では自民党公明党から「大串氏以外の幹部もやっている」「言行不一致だ」とのツッコミが相次いだ。(佐藤裕介)
◆「パーティーは適法に行われている」と立民
大串氏は23日、国会内で報道陣に、6月17日に東京都内のホテルで会費2万円の政治資金パーティーを開催すると明らかにした。党が提出した禁止法案との整合性については「法案が通れば(パーティーは)やらない」と繰り返し、今のところ延期や中止の考えがないとも説明している。
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衆院政治改革特別委員会で質問する自民党山下貴司
「大串選対委員長だけを責めるつもりはない。他の立憲民主党の幹部の皆さまもおやりになっている。4月25日、ホテルニューオータニで、私が得ている情報では安住淳国対委員長が会費2万円の朝食会をされた」
特別委で、自民党山下貴司元法相は立民に矛先を向けた。5月27日には「岡田克也幹事長が会費2万円の昼食会をされると聞いている」とも述べ、「法律が通らなければ(パーティーを)やり続けるのか」と問うた。
法案提出者として答弁に立った立民の本庄知史氏は「2つのパーティーは適法に行われている」と説明。法案の成立・施行前は党所属議員にパーティーの開催自粛は求めず、各議員の判断に委ねることが「党の方針」だと反論した。
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衆院政治改革特別委で答弁する立憲民主党の本庄知史氏
◆公明は「立民幹部は率先して範を示せ」と批判
続いて公明党の中川康洋氏が、立民が政治資金パーティーの開催そのものの禁止を掲げた理由を質問した。
本庄氏は「パーティー券は企業・団体も購入でき、事実上、政治資金規正法で禁じる政治家個人への企業・団体献金であるとの批判が根強くある」とした上で、自民派閥の政治資金パーティー裏金事件を念頭に「政治資金パーティーそのものが政治不信の原因となっている現状を鑑みれば、これを禁止することが信頼回復のための唯一の方策だ」と主張した。
これに対し中川氏は、大串氏がパーティーを開催する方針であることに言及しながら、「(立民の)幹部は率先して範を示すことが重要だ。法律が成立したら守るが、それまでは守らないという考え方では信用することができない」と批判した。
 
【一問一答】立民幹部の政治資金パーティーは「全面禁止法案」と矛盾? 泉健太代表は記者会見で何と答えた【一問一答】(2024年5月24日『東京新聞』)
 
立憲民主党泉健太代表の記者会見が24日にあり、党幹部の政治資金パーティー開催が相次いで判明していることに質問が集中した。立民は政治資金パーティーの全面禁止を規定する法案を衆院に提出しているが、岡田克也幹事長は5月27日に、大串博志選挙対策委員長は6月17日に、それぞれ自身のパーティーを開催予定。安住淳国会対策委員長も4月25日に開いた。
泉氏は、仮に法案が成立しても、施行までに約2年半の「経過期間」があると強調。その間にパーティーを開くことは問題ないと繰り返した。
記者が「タバコが体に悪いからタバコ禁止法案を出す」という例えを出して「法律の成立・施行まで体に悪いタバコを吸い続けるのか」と追及する場面もあったが、泉代表は野球の例えで「スパイクは危険だから禁止しようという時でも、今は自民党がスパイクを履いているのだから、野党が草履では試合にならない」と反論した。(佐藤裕介、宮尾幹成)
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記者会見で質問に答える立憲民主党泉健太代表(党の公式Youtubeチャンネルより)
【泉代表の冒頭発言】
◆泉代表「政治団体の収支構造を徐々に変える」
「わが党の政治資金パーティー禁止法案には、法の施行期日は令和8年(2026年)1月1日と書いている。その趣旨は、現実を考えた時に、議員たちの政治団体の収支構造を変えていく必要がある(ということ)。今、私設秘書を雇っている議員は当然いるし、事務所も今の収支構造の中で運営をしているところもあろうと思う」
「そういう収支構造の中から、政治資金パーティーをなくしていくことを法案として提出する場合、『法案が通ったら明日から(禁止)』、これはやっぱり無理がある。あくまで現実的にわれわれは法律を作っているから、経過期間、猶予期間は一定、ある。その間の中で、例えば秘書を減らさなきゃいけないかもしれない。事務所を安い家賃のところに移転する必要があるかもしれない。これが現実じゃないか。徐々に収支構造を変えていくということ」
「ですから法律が施行されるまでの間、パーティーを禁止しているものではないということになる。そういったことを想定しながら、この法案を出している」
【報道陣との主な質疑】
◆泉代表「覚悟は不変。姿勢は変わらない」
記者「昨日、大串選対委員長が6月に政治資金パーティーを予定していると記者団に表明した。大串氏の予定、判断に対する代表の考えを伺いたい」
泉代表「誰がいつパーティーを開催する、しないというのは、個人の政治活動と認識をしているので、党として集約しているものではない。その中で今朝、(衆院)政治改革特別委員会で自民党議員から質疑があったが、例えば岡田幹事長は私設の秘書だけで10人ぐらいいる」
「その岡田幹事長が、わが党の政治改革の本部長になって政治資金パーティーの禁止法案を出すのは、並大抵な覚悟じゃできない。でも、その並大抵ではない覚悟においても、法案を出したからいきなり全員解雇して後は知りませんというわけにはいかないわけで、法案には経過措置が用意されている。その間に収支構造を変えていくということが大事だ。収入を全部ただ断てば格好がいいとか、覚悟が示せるという話だけで済む問題じゃない。徐々に政治全体の体質を変えていくということになる。そういった意味で覚悟は不変だ。われわれの姿勢は変わらない」
記者「禁止法案を出しているにも関わらず開催するのは矛盾だという指摘もある」
泉代表「ちゃんと改革を実行していくことにおいては、現実的であることも必要だと思っている。しかし、政治資金パーティーをなくしていくことは明確にしているし、そこに向かって混乱がないように経過措置は当然必要だと考えている。そういった意味では何も揺らぐものはない。改革の方向性は不変だ」
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立憲民主党岡田克也幹事長=5月24日、国会で
◆「公平なルールで戦うのが当然」「我慢大会ではない」
泉代表「同じ世界で競い合う時に、ルールが違った状況で戦うのは公平とは言えない。やはり戦う以上は公平なルールで戦うことが求められるのは当然じゃないか」
「例えば自主的に政治資金パーティーをやりませんと言って 自民党の方はどんどんやり続けるということでいうと、自民党の側の収入だけは大きく膨らんで、そしてそのお金を使ってより国民の皆さんに情報を届けたり、活発な政治活動をしたり、多くの人を雇ったりということになっていったままにしておくと、全く競争条件が違ってくる。お金の少ない方が不利になっていくと思う」
「我慢大会とかそういう競争の話ではなくて、政治の世界において資金集めに一番執着し、一番大きな額を集めている自民党にいかにキャップ(上限)をかぶせていくかという発想に立たないと意味がない。他の政党が我慢していくことに意味があるんじゃなくて、自民党そのものの大きな収金構造、金集め体質そのものをどうやって制限を課していくかということが必要であって、そうすることによって政界全体も資金構造は変わっていくと思う」
◆「野党のパーティー収入が与党の政策に反映されるとは考えにくい」
記者「衆院特別委の法案説明の中で、パーティー禁止について本庄知史議員が、多額のパーティー券購入によって中立公正であるべき政策決定が歪められているのではないかと主張していた。立民もパーティーを開いているが、自民と違って政策決定は歪められないのか」
泉代表「トータルで言えば、間違いなく自民党が断トツで多額のお金を手にしているという実態がある。そもそも政治資金パーティーという言葉も、法律も、位置づけも、自民党から出てきたものだ。自民党が、政治献金に注目が集まって政治献金を集めにくくなった時に、苦肉の策としてパーティーという手法を使ってお金を得られるような枠組みを作ったという経緯がある」
「与党野党関係なく、多額のパーティー収入があったとすれば、政策を歪める可能性っていうのは存在はする。しかしながら、野党がパーティー収入を得て、それがそのまま与党の政策、政権の政策に反映されるのかというと、普通はなかなか反映されるとは考えにくいということがある」
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立憲民主党大串博志選対委員長(党のウェブサイトより)
◆「相手がスパイク、こちらが草履では試合にならない」
記者「イコールフッティングという考え方が、他党や国民に理解されているとお考えか」
泉代表「不断の努力が必要だ。一方で、野球で例えたら相手チームはスパイクを入ってますと、こちらは草履で試合をやってくださいねって言われてたら、果たしてそれがどうなのかということを考えていただくといいのかなと。アメフトで、相手側はフルで防具をつけているけれどもこちら側はヘルメットをつけずに試合をしてくださいと言われたら、それは有利不利って言ったら当然違ってくる。やはり各政党、同じルールのもとで戦う。そうじゃなければ、やっぱりおのずと強い方が決まってしまうというのは、分かりやすい例になるんじゃないかなと」
記者「パーティーを禁止すると言いつつ、実際に開く予定があるのは分かりにくい。少なくとも法改正の結論が出るまでは、党としてパーティーを自粛するお考えはないのか」
泉代表「全部われわれが一切収入を閉ざしても事務所の運営をやっていけるという状況までにしないと、こういう(パーティー禁止の)提案ができませんって言われたら、いつまでたってもできない。パーティー禁止の法案を提出した時点で禁止しなきゃだめだということだと、やはり現実的ではない」
◆「自転車に青切符、即日施行では世の中が大混乱に」
記者「結論を出すまでは自粛してもいいんじゃないかという党内の声はないのか」
泉代表「法律の施行期日とか経過期間は、どの法律にも大抵は用意されている。例えば道路交通法が変わって自転車に乗る方々に青切符を切るという話もあるが、これも法案が通ったから、すぐその日からやると言ったら、世の中が大混乱になってしまう。徐々にそこにシフトしていけるように十分な周知啓発とかも行っていくというのは当たり前の法律の立て方で、そういうところは大事にしなきゃいけないと思う」
記者「大串氏自身は法律の成立後にパーティーをやめると言っていたが、党としては施行後ということでいいのか」
泉代表「党として何か言っているわけではない。法律としてはそういう法案を国会に提出をしているということ。党として現時点で各議員に対して制約を課しているものがあるかといえば、それはないということだ」
記者「大串氏は成立後にやめると言っていた」
泉代表「それは個人のそれぞれの考え方だ」
◆自身のパーティー開催は「何とも言いようがない」
記者「代表自身は政治資金パーティーはやっているのか。党のパーティーもいったん開催しないことになっているが、この扱いはどうなっていくのか」
泉代表「党の政治資金パーティーについては、扱いは変わっていない。今やる予定はない。私に聞きたいのは、今後予定があるかとか? 開いたことはある」
記者「今後は政治資金パーティーに関してどういうふうにやっていくのか」
泉代表「今のところ予定はない」
記者「法律が施行されたらやめるということか」
泉代表「まだ施行もされていないし、まだ不確定なことなので何とも言いようがない」
◆禁止法案が成立しなければ「立民独自に禁止はしない」
記者「政治資金パーティー禁止法案が成立しなかった場合、立民独自に禁止する予定はあるのか」
泉代表「ない。成立しなかったんでしょ。何もないですから」
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記者「例えば、タバコは体に悪いから全面的に禁止しましょうと。2年間猶予があって、じゃあそれまで吸い続けます、成立しなければ吸い続けますというのと一緒。なかば詭弁(きべん)だ」
泉代表「タバコの例はちょっとよく分からないが、野球で例えた時、自民党の議員は早く走れるスパイクを履いていて、そのスパイクを彼らは脱ごうともしていない。それを法律でそのスパイクは危険すぎる、そのスパイクは早すぎる、おかしい(から禁止しようということ)。飛び抜けて他の政党と違うものを得続けている政党がいる時に、そこにルールを(作り)、みんなが同じ環境で戦えるようにしようというのは当たり前のことだ」
「その時に自民党の方はやらない、だけどわれわれだけは草履で野球やりますと言ったら勝てるわけない。野党にことさらに『あれをするな、これをするな』ではなく、国会全体、国政全体、政党全体にどんなルールを課すのかというのが大事な論点なんじゃないのか」
記者「これから立民の議員が新たにパーティーを企画しても、議員個人の判断だから何も言わないということか」
泉代表「当然ながら法現行法は当然守らなきゃいけないし、絶対に何かおかしなことがあってはいけない」
記者「新たに企画することは止めるものではない」
泉代表「そうですね」