核兵器を脅しの道具とすることは断じて許されない。愚かな威嚇が自らの孤立をさらに深めることを認識すべきだ。
短距離ミサイル「イスカンデル」を移動式発射台上で空に向けたり、極超音速ミサイル「キンジャル」を搭載した軍用機が出撃したりする模様を公表した。いずれも核弾頭を搭載可能な兵器だ。
今回、核の脅しを一段と強めたのは、ウクライナ侵略が泥沼化し、弾薬の調達さえままならないロシアの苦境の裏返しではないか。
危機をあおる卑劣な振る舞いは看過できない。
ロシアは演習について、西側諸国の「挑発的な発言や脅迫への対抗」だと主張している。
だがそれは言いがかりだ。こうした事態を招いたのは、ロシアの蛮行が原因である。
大都市を住民もろとも一瞬のうちに破滅させる戦略核に比べ、戦場など局地的に使用する戦術核の被害は少ないと言われる。だが、核の殺傷力と残虐性が通常兵器と比べものにならないことは、広島、長崎の惨状からも明らかだ。
侵略開始から2年以上が過ぎたウクライナで、ロシア軍は多くの民間人を虐殺したほか、子供らをロシアに強制的に移送し、ロシア人の養子にしようとしてきた。非道ぶりは際立っている。
プーチン氏が作戦を主導し、合理的な判断を退けるようになれば危険極まりない。