「岸田総理を甘く見ちゃダメだよ」。小沢氏は3月下旬、記者団にこう語り、「清和会(安倍派)をズタズタにやっつけて、今度は二階(俊博元幹事長)を引退に追い込んだ。ものすごくしたたかだよ」と警戒感をあらわにした。早期解散の可能性を問う記者団には「(党内に)敵、いねえもん誰も。再選確実なのになんで解散するの?」と語り、総裁選で岸田氏が再選、衆院解散はその後との見立てを披露した。
確かに、党内最大派閥として影響力を持ち続けた安倍派で「5人衆」といわれた実力者たちは、いずれも裏金事件を巡る党の処分を受け、表舞台に当面立てない状況に追い込まれた。
特に、国会の代表質問で「国民が期待するリーダーの姿が示せていない」と岸田首相を厳しく批判した世耕弘成前参院幹事長は離党勧告、「ポスト岸田」に意欲を示していた西村康稔前経済産業相は党員資格停止1年と厳しい処分結果になった。
岸田首相と政治的に距離があった二階氏は「岸田さんから裏金事件で処分されるくらいなら」(二階氏周辺)と、自ら次期衆院選への不出馬を表明し、事実上の引退を宣言。二階氏は1993年に小沢氏とともに自民党を離党して新生党の結党に関わるなど、小沢氏を側近として支えた。小沢氏は、かつての子分を「二階も岸田くんに劣らずしたたかだけど、彼の今の状況ではかなわんのかなあ」と振り返った。
岸田首相の一般的なイメージは、真面目でいい人そう、悪く言えば歯切れが悪く迫力不足……だろうか。裏金事件の逆風にさらされ、右往左往しているようにも見える首相の「したたか説」は当たっているのか。
本人に「狙った通りの結果ですか?」と尋ねてみたが、当然ながら「(対抗馬を)追い込むとか潰すとか、そんなつもりはない。一つ一つやるべきことをやった結果だ」とかわされた。
首相の内心を探る上で参考になる言葉を、小沢氏が師と仰いだ田中角栄元首相が残している。
「首相になって一度は口にしたいのが派閥解消」
党内の実力者とどう折り合いをつけながら政権を運営するかが、歴代首相の悩みのタネだったことがうかがえる。そうみると、岸田首相が先陣を切って打ちだした「派閥解散」もしたたかな一手にみえてくる。
首相による岸田派解散宣言を受け、…