政党から党幹部に支払われ、巨額ながら使い道を公開する義務がない「政策活動費」。“合法的な裏金”とも言われています。その内情について、永田町に詳しい元秘書の男性に直撃取材。自民党幹部は詳細な説明を避けますが、政策活動費は一体何に使われているのでしょうか?
■もう1つの“ブラックボックス”
政治部の川上泰記者が、森喜朗元首相に呼びかけます。 「森さん、すみません。森さん、一言いただけませんか。一連の裏金問題でご説明するお考えはございませんでしょうか?」 キーマンの1人とされる森元首相は口を閉ざしたまま。自民党の派閥の裏金問題は、いまだ実態解明が進みません。 裏金とともに“ブラックボックス”と言われている金、それが「政策活動費」です。政党から党の幹部に支払われるもので、国民に使い道が公開されないことから、“合法的な裏金”とも言われています。 その内情を知る人物に迫りました。
■政治資金収支報告書に見る各党の支出
このギモンを調査する川上記者は自民党を担当し、河野デジタル大臣や麻生副総裁を日々取材しています。まず川上記者が調べたのは、各政党の政治資金収支報告書です。 政党から党の幹部に支払われる政策活動費。2022年の政治資金収支報告書によると、1年間で、日本維新の会は約5057万円、国民民主党は6800万円、立憲民主党は1億2000万円、自民党は14億1630万円という大金を支出しています。 何に使ったのか明らかにする必要がないため、“合法的な裏金”とも言われています。
■過去映像には分厚い封筒と200万円が
日本テレビには、自民党から現金を受け取った議員の映像が残されていました。1998年の映像では「その黄色いやつが…」という問いかけに、議員が「えへへへ」と笑う声が確認できます。手元には、分厚い封筒が握られていました。 2005年の映像には、封筒に「政策活動費」の文字がありました。中から出てきたのは200万円の現金です。
■11人の幹事長経験者に取材を依頼
金は一体何に使われるのでしょうか。川上記者は、自民党幹部の中で最も多い9億7150万円を2022年に受け取った茂木幹事長を会見で直撃しました。 ──幹事長も受け取っていらっしゃると思いますけれども、どのようなものに使ってきたのでしょうか? 茂木幹事長 「使途の公開について、政治活動の自由とのトレードオフ(二律背反)の関係にある問題であると考えておりまして…」 政策立案や調査研究などを目的に使っているとし、具体的な使い道は明らかにしませんでした。 そこで、11人の幹事長経験者に政策活動費の使い道について取材を申し込みました。しかし「時間がない」「答えられない」などとして、誰一人応じることはありませんでした。
■選挙の際の「陣中見舞い」に充当
政策活動費を、政治家たちは一体何に使っているのでしょうか。永田町で自民党幹部らの秘書を長年務めた男性が、その実態を明かしました。 ──渡されたお金をまず、どこに持って行くんですか? 元秘書の男性 「主に選挙が多かったですね。選挙の時の応援。党の幹部がある候補者に、陣中見舞いとして渡します」 「陣中見舞い」とは、党の幹部が候補者の選挙応援に行く時に配る現金のこと。そこに政策活動費が使われているといいます。 ──それって1回、いくらぐらいなんですか? 元秘書の男性 「それは100万から、例えば500万とか」
■元自民党の鈴木宗男議員も告白
かつて自民党で選挙対策の幹部を務めた鈴木宗男議員も、こう振り返ります。 「私の時も(自民党から)1億2000万円とか1億3000万円という支出になっていると思いますけどね。選挙の時はあるんです」
■人目につかぬよう…「懐事情は厳しい」
党の幹部が選挙応援に行った時に渡すという現金は、どうやって渡されているのでしょうか。 元秘書の男性 「ほとんど見えないところで渡しますので。一般の目に触れないところ。例えば車の中とか。それから候補者の奥さんとか」 人目につかないところで渡されていたといいます。その使い道について元秘書の男性は「例えば地元の事務所の家賃、私設秘書の給料、ガソリン代、慶弔費とかですね。寄付金だけではまかなえないですから。かなり懐事情は厳しいと思います」と明かします。
■身内だけに限らない使い道とは?
また、政策活動費の使い道は身内だけではありません。元秘書の男性は、相手陣営であるはずの野党に政策活動費を渡した経験を告白。 「最高額で私は2億運んだことはあります。一度にです。議員から『誰々のところに持って行くように』と言われて、紙袋2つ渡されて」 デパートの紙袋に入っていた2億円の現金。「それをみんなに見えないように車に積んで、届け先に持って行きましたね」と振り返ります。元秘書の男性は「詳しいことは明かせない」としながらも、野党の分裂を促すため現金を渡したという。 「やっぱりすごいなとは思いましたけどね、その時。こういうお金が動くのかと」 政治が動くそのウラで使われてきたという政策活動費。川上記者は最後に、こんな質問を投げかけました。 ──疑問に思ったことは? 元秘書の男性 「疑問……うーん、疑問に思うっていうのはあまり。その時はマヒしてましたから」 大金が動く政策活動費。その使い道に説明が求められます。
■幹事長経験者「言えるわけがない」
川上記者 「今回の取材では政策活動費が選挙活動のために多く使われていることは分かりましたが、具体的に何に使われているのかは、受け取った本人以外は分からないのが現状です」 「例えば政治活動ではなく自分の借金の返済に充てていたり、私的なものに使ったりしたとしても報告する義務はありません」 「実際に幹事長経験者の1人に取材をしてみても、『この陣営に500万円、あの陣営に200万円渡したとか、そんなこと言えるわけがない』と話しています。公開されていない以上、実際に何に適切に使われているか追いようがない状況となっています」
■どうあるべき?…各政党の主張は
森圭介アナウンサー 「ただ、政治とカネの問題で国民から厳しい目が向けられていますよね。使い道を明らかにしようという動きはないんですか?」 川上記者 「岸田首相はいわゆる派閥の裏金事件の再発防止に向けて、今の国会中に政治資金規正法の改正を目指しています」 「その中で政策活動費のあり方について、公明党は使途公開の義務化、野党の立憲民主党や日本維新の会、国民民主党、共産党は政策活動費をやめるべきと主張しています」
■「政治資金規正法」改正の焦点は
鈴江奈々アナウンサー 「一方で自民党はどうなのでしょうか?」 川上記者 「岸田首相は国会で、政策活動費の使い道を公開すると『政治活動に影響が出る』『個人のプライバシーや企業、団体の営業秘密を侵害する』と話しています。与野党の主張が異なる中、いかに政治不信の払拭につながる対策を打ち出せるかが法改正の焦点です」 (5月3日放送「QUESTION!#みんなのギモン」より)
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