緊急時に国民の生命の保護に必要な対策を国が地方自治体に指示できるようにする地方自治法改正案が7日、衆院本会議で審議入りした。この日、国会内では「徹底検証!これでいいのか地方自治法『改正案』」と題した反対集会が開かれた。政府は、新型コロナウイルス禍の教訓を踏まえた改正案だと主張するが、出席者からは、法改正の根拠となる「立法事実」がないとの指摘が相次いだ。
◆「国の指示がなく混乱した事実はない」
東京都世田谷区の保坂展人区長は「コロナ対応では国がいつも正しかったわけではなく、自治体が国の指示を受けることなく感染拡大防止のための知恵を出した」と振り返り、国会の関与なく閣議決定のみで国が自治体に指示を出せる仕組みを問題視した。
大勢の参加者らが集まった地方自治法の改正案を検証する院内集会
元千葉県我孫子市長で中央学院大の福嶋浩彦教授は「東日本大震災の時、『適切な指示を出して』と国に要望した東北の知事は1人もいなかった。コロナの感染拡大時も含め、国からの指示がないために問題が起こったり混乱したりした事実はない」と訴えた。
集会は、保坂氏が世話人を務める「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク」(LIN-Net)など4団体が主催。市民や地方議員ら約140人が参加し、立憲民主と共産、れいわ新選組の3党の国会議員も出席した。(山口哲人)
地方自治法 地方公共団体の組織や運営に関する事項を法律で定めるとする憲法92条に基づいた、地方自治で最も重要な法律。国と地方の役割分担や住民の権利・義務、条例、議会などについて規定する。2000年施行の地方分権一括法により、国と地方の関係は「対等」と位置付けられた。国会で審議中の改正案は「対等」の原則は維持するが、特例として非常事態の際、国の指示権拡大を定める。
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