憲法記念日「憲法改正求める立場」「憲法守る立場」双方が集会(2024年5月3日『NHKニュース』)

憲法記念日の3日、憲法改正を求める立場の人たちや憲法を守る立場の人たちが、それぞれ都内で集会を開きました。

《「憲法改正を求める立場」の人たちでつくる団体の集会》

憲法改正を求める立場の「民間憲法臨調」などは、東京 千代田区でフォーラムを開き、主催者の発表でおよそ800人が参加しました。

この中で官房副長官補を務めた同志社大学の兼原信克特別客員教授は「中国の軍事拡大や北朝鮮核武装、ロシアのウクライナ侵略と国際情勢は悪化の一途だ。憲法の改正、特に9条の改正は私たちの使命だ」と訴えました。

このあと、能登半島地震を踏まえて、「法律での対応には限界があり、憲法への『緊急事態条項』の新設は不可避の課題だ」などとして憲法改正の国会発議を各政党に求める声明を採択しました。

参加した62歳の男性は「憲法が一言一句変わっていないのはこの進んだ時代にありえない。賛成も反対も声を出し、自分の意志を示すことが国民の責任だ」と話していました。

参加した各党からは

岸田総理大臣はビデオメッセージで「社会が大きく変化し、憲法改正がますます先送りのできない重要な課題となる中、国民に選択肢を示すことは政治の責任だ。いたずらに議論を引き延ばし、選択肢の提示すら行わないことになれば責任の放棄と言われてもやむをえない」と指摘しました。その上で、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について改めて陳謝し「政治の信頼回復のためにも政治改革の議論とあわせて憲法改正という重要な課題について党派を超えて連携しながら真摯(しんし)に議論を行う」と強調しました。

また自民党憲法改正実現本部の古屋本部長は「国会の憲法審査会は憲法改正原案の取りまとめに向けて議論を加速すべきだ。各党には参議院でも審議を促進するよう働きかけていただきたい。小異を捨てて大同につくという精神で戦後初の憲法改正の実現に向けてまい進していきたい」と述べました。

日本維新の会の小野泰輔氏は「緊急事態条項の条文案を独自に作成し論点が出尽くすまで検討した。あとは国会で決めるだけで、時間を区切り結論を出すのは大人の社会で当たり前のことだ。だらだらと何年先になるか分からないような議論ばかりするのはやる気がないだけだ」と主張しました。

公明党の大口憲法調査会副会長は「大規模災害などの緊急時に国会機能を維持するための憲法改正は待ったなしであり、衆議院憲法審査会の議論を通じて論点は出尽くした。賛同する会派と共に近々議員任期延長のための改正案のたたき台を出し、条文案を起草できるよう全力を挙げたい」と訴えました。

国民民主党の玉木代表は「いざというときに備えて緊急事態条項を整備することは国民の生命と財産、わが国の主権を守るために不可欠だ。いつまでもだらだらやっていても結果は出ないのでしっかりと前に進める必要がある」と述べました。

《「憲法を守る立場」の市民団体が開いた集会》

憲法を守る立場の市民団体が東京・江東区で開いた集会には主催者の発表でおよそ3万2000人が参加しました。

この中で、長年憲法の問題に取り組んでいる伊藤真 弁護士は「経済の安全保障や武器輸出、そして学問や芸術など、さまざまな問題に政府が介入し憲法を無視した政治がどんどん進もうとしている。今まで憲法に守られてきた私たちが今度は憲法を守る責任を果たさないといけない」と訴えました。

集会のあと参加者たちは横断幕やプラカードを掲げながら会場の周辺を行進し、「武力で平和はつくれない」とか「憲法を暮らしにいかそう」と声を上げました。

参加した50代の男性は「よい形で憲法が変わるならいいのですが、現在進められている改憲の議論には反対で、今の憲法をいかしてもっと暮らしやすく人生が豊かになるような政治を行ってほしいです」と話していました。

参加した野党4党からは

この集会で、立憲民主党共産党など野党4党は、自民党が主張する、緊急事態の際の国会議員の任期延長のための憲法改正が必要ないことや、自公政権は安全保障政策で憲法を踏みにじっているなどと訴えました。

この中で立憲民主党の逢坂代表代行は「『裏金議員』が憲法を議論する正当性があるのか。憲法は国会議員や公務員などを縛る法規であり、憲法に縛られる側の人間が法律を犯しているかもしれない中、声高に憲法改正を叫ぶことは異常な姿だ」と指摘しました。

その上で「緊急事態に名を借りて、国会議員の任期を延長させる議論を一生懸命やっている人がいるが順番は逆だ。災害に強い選挙や参議院の緊急集会の役割を充実させる議論を尽くす必要がある」と述べました。

共産党の田村委員長は「戦争をする国づくりを何としても止めたい。集団的自衛権の行使容認や軍事費2倍などは、歴代自民党政権憲法9条があるからできないと言っていたものばかりだ。いったいどこまで憲法を踏みにじるのか。危険な自公政権の政治を許すわけにはいかない」と訴えました。

れいわ新選組の櫛渕共同代表は「能登半島地震では、がれきの撤去が進まず『憲法25条』が規定する最低限度の生活が保障されていない。被災地を放置しながら、災害のために憲法を改正し、緊急事態条項を入れるのは茶番だ」と述べました。

社民党の福島党首は「自民党政権特定秘密保護法や安全保障関連の3文書などで憲法破壊をくり返してきた。法律をやぶる『裏金議員』に憲法を変える資格はなく、憲法改正よりも憲法を生かすべきだ」と主張しました。

 

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