校則イエローカード 弊害が明らかなら廃止を(2024年5月2日『琉球新報』-「社説」)

 半嶺満県教育長は本紙のインタビューで、校則違反などの回数に応じて段階的に重い処分を生徒に課す県立高校の指導法「イエローカード」について、「廃止も含めて検討する」との方針を示した。
 2021年に県立コザ高校で2年(当時)の空手部男子生徒が自ら命を絶った問題を調べた第三者再調査委員会は、調査報告書でイエローカードの廃止や見直しを提言している。コザ高校は既にこの制度を廃止している。
 指導法の妥当性について検証すべき時期に来ている。生徒に不要な心理的負担を強いることが指摘されているからだ。弊害が明らかならば廃止に踏み切るべきだ。
 イエローカードは校則違反で生徒を指導する際に出されるもので、発行枚数が増えるほど罰則が重くなる。コザ高校の場合、違反1回目は「注意」、2回目は「反省文」となり、5回目は「停学」、6回目以降は「懲戒規定に準ずる」などと定めていた。
 この指導法はコザ高校以外でも「学校生活改善カード」などの名称で導入している。再調査委の報告書は「生徒たちに学校教師に対して発言することや、異議申し立てを諦めさせる形で機能することが特徴」と指摘し、「生徒が自死に至る心理的変化を発見できなかったことの遠因となった可能性がある」としている。
 報告書の指摘は重い。学校側にとっては生徒の問題行動の抑止になるかもしれないが、生徒と教師の円滑な対話がないままカード発行によって罰を課すような指導は生徒を精神的に追い込むことになろう。罰則を前提としたカード発行は好ましい生徒指導とは言いがたい。
 半嶺教育長は本紙に「元々、子どもたちに説明しながら段階的に指導していくという趣旨で行われていたと理解している。それが形式的になり、指導が目的となってしまった部分がある」と述べた。学校現場での運用状況を反映した発言であろう。十分な対話を経ないまま生徒の行動を形式的に基準に当てはめ、罰則を課す運用が常態化しているならば、継続の必要性は乏しいのではないか。
 イエローカードのように、規則に違反した場合のペナルティーを定めて運用する指導法は「ゼロ・トレランス(寛容度ゼロ)」と呼ばれている。クリントン政権以来、米国の教育現場で導入された。
 日本では2006年、文部科学省がこの指導法に関する手引を全国の学校に配布している。文科省は、学校ごとに明確なルールを定め、小さな違反も見逃さない一貫した対応が可能になるという利点を挙げている。半面、生徒の個性を無視し、一律の基準で生徒に罰を課す指導法に対する弊害も指摘されてきた。
 県教育庁や各学校現場はイエローカードの運用実態を早急に検証する必要がある。その上で制度存廃の是非を議論してほしい。