J1初挑戦の町田の戦い方がサッカー界にインパクトを与えている。ファウル数の多さが相手サポーターなどから「プレーが荒い」と批判される一方、実際に対戦した選手は「激しくやるのはノーマルなこと」と冷静な反応も。第9節を終えて首位に再浮上。「これが町田だ」という戦い方とは。(加藤健太)
◆球際狙いのプレースタイルだから
21日のFC東京戦。前半44分、相手陣でDF林が、ボールを受けようとするFC東京の仲川に激しく当たって倒した。敵地の観客からブーイングを浴びたが、町田とすればボールを奪えばゴールの期待が高まる得意な形だった。
Jリーグが公開しているデータによると、今季のファウル総数は23日時点で町田は141回。湘南の146回に次ぎ、福岡と並ぶ。警告(イエローカード)数は最多の21回。一方でパス回数はJ1最少で、最多の新潟の半分以下。パスをつないでゴールに迫るのでなく、相手ボールを奪ってからの速攻が町田の強み。激しくぶつかる場面はどうしても増える。
ファウルの多さは戦い方に関係する、というのが黒田監督の見方だ。「ボール際を狙っているからファウルまがいな形になる。逆に、ボールを保持するサッカーなら人から離れてプレーしたがるからファウルになりにくい」。他チームとの戦い方の違いが前提にあることを強調する。
◆荒さもアイデンティティー「これが町田だ」
13日の第8節は昨季覇者の神戸に対策されて1-2の敗戦。町田は3枚の警告を受けたが、ドイツでプレー経験がある神戸の元日本代表MF山口は「必要なところでファウルして止めるのは全然いい」とし、「荒いとか激しいとかは感じなかった。こういう緊迫した試合があってもいい」と言った。
この一戦に向けて町田はJ1の新参者として、「世間の目」を逆手にとった宣伝用動画を公開していた。「塗り替えろ。Jの常識を」の言葉とともに、黒田監督が就任した昨季のJ2時代から選手が激しくぶつかる映像をつなぎ、プレーが荒い印象をあえて強調。「守備的で面白くない」「J1で通用しない」といったアンチの「声」を羅列する語りから、1分強の動画で「これだけ言われたら、勲章だ」と言い切る構成。サッカーファンの間で物議となった。
動画について「チームにアイデンティティーがあるのはすごくいいこと」とMF仙頭。「これが町田だ、文句あるのかっていうメッセージ性がある」と評した黒田監督は「J1での1年目。安定するより悪役レスラーのようにひたすら立ち向かうことも大事。首位を走っていることに根拠があると信じてこの道を進んでいきたい」と話した。