配属ガチャ(2024年4月6日『東奥日報』-「天地人」)

NHK

 

 入社式や入庁式、辞令交付式が相次いだこの時分、新社会人諸君にとって最大の関心事は配属先となろう。職種や勤務地は希望通りか否か。人によっては、就職先でのその後の運命が決まる心地に陥るかもしれない。

 若者の間では、そうした場面を「配属ガチャ」と形容するのだそうだ。自分の意志で配属先を決められない現実を、何が出てくるか分からないカプセル玩具自販機に重ねた造語である。言葉の軽い響きとは裏腹に思い通りにならない諦観がにじむ。

 リクルート就職みらい研究所の調査では、今春卒の学生の73%が「入社を決める前までに配属先を明示してほしい」と回答した。若者が配属ガチャの「ハズレ」を感じた場合は早期退職につながりかねず、民間企業には募集段階で職種を細分化し入社後のミスマッチ防止を図る動きも。

 人手不足が続く中、雇用する側も人材引き留めに腐心しているようだ。ただ人材配置は組織運営上の戦略でもあり、個々人の希望に全て応えることは難しい。当人が気付かない適性を見抜いているケースも考えられよう。

 ベテランであっても仕事への自分の向き、不向きが分かる人は多くはないだろう。いわんや働き始めたばかりの新人が決めつけるのは早計だ。かくいう当方、心ならずも記者の端くれとして何とか30年目。向きか、不向きかという答えは今も見つかっていない。