4月に入り、今年も多くの社会人が誕生しました。今、そうした若者たちが会社に求めるものは、昔とは様変わりしているようです。
【写真を見る】「不満はないけど不安がある」若い世代で転職希望者が急増 背景に若者の“キャリア不安”【風をよむ】サンデーモーニング
■愛子さまも…
各地で新社会人 桜が満開を迎えた東京。4月1日、各地で「新社会人」が誕生しました。 天皇皇后両陛下の長女・愛子さま「これから社会人としての日々が始まりますが、早く職場になじみ、皆様のお役にたてますよう頑張って参りたいと思っております」 天皇皇后両陛下の長女・愛子さまもその一人。日本赤十字社に入社し、その抱負を述べられました。 例年同様、多くの企業で入社式が行われましたが、今年の新入社員を巡っては、去年と少し変わったところがあります。
福岡銀行・五島久頭取「7月から4万5000円引き上げて、26万円とします」 例えば、こちらの福岡銀行は、頭取が入行式で突然賃上げを発表…。
新入行社員「給料アップに見合った働きが出来るといい」 今年は初任給を大幅に引き上げる企業が、相次いでいるのです。 新入社員「やる気につながりますし、次のステージに上れるよう頑張っていきたい」
背景にあるのは、景気が緩やかに回復していることに加え、予想を上回るペースで進む少子化によって、企業の「人材獲得競争」が、厳しさを増していることがあります。
■企業は人なり―経営の神様の言葉 「企業は人なり」―。
そう語ったのは、「経営の神様」と言われ、現在の パナソニックを築いた松下幸之助氏。かつて、こんな言葉を遺しています。 「松下電器は人をつくっています。電気製品もつくっていますが、その前にまず人をつくっているのです」 社員を大切にし、不況時にも「従業員は一人も減らさない」と、社員を解雇しなかったという松下幸之助氏。もともと日本企業の多くは、可能な限り社員の解雇を行わず、家族同然に扱ってきました。
■変わる仕事…
バブルから就職氷河期へ 社員もそれに応え、「モーレツ社員」「企業戦士」となって、「24時間戦えますか」と鼓舞されながら、仕事に励んだのです。しかし… 1990年代のバブル崩壊後、若者たちを襲ったのが就職氷河期でした。
当時の就活生「何としても内定がほしい、職種は選んでられない」
終身雇用を続けてきた企業でも、リストラの波が押し寄せ、厳しい経済環境のもと、そのしわ寄せは若い世代に及びます。
■ブラックからホワイトへ…働き方改革
ブラック企業・元社員「残業代は一切出ない。『死ぬまでやれよ、死なないから』って言うんです」
過酷な勤務が原因で自殺者が出るなど、いわゆる「ブラック企業」が表面化し、大きな社会問題となったのです。
そこで、政府は2016年以降、労働環境の改善、いわゆる「働き方改革」を提唱。時間外労働を減らし、パワハラを防止するなど、労働環境は改善されていきました。
■転職の時代…若者の仕事観は?
ところが、2009年に入社した大卒社員の5人に1人だった離職数は、働き方改革関連法施行後の2021年、4人に1人に増加。
また、転職サイトに登録する新社会人は去年、2011年のおよそ30倍に拡大したのです。
若手社員・街録(社会人1年目)「資格とって転職しようかなっていう感じはあります」
若手社員・街録(社会人5年目)「転職も自分の人生の選択肢のひとつだと思います」
職場の環境は改善されたのに、反比例するように離職や転職を希望する若者が増えたのは、なぜでしょうか。若者の働き方を研究する、古屋さんは…
古屋星斗氏(リクルートワークス研究所主任研究員)「“キャリア不安”ということが背景にある。これまでは大きな会社に入れば安定した人生が送れた。今はそうじゃなくてスキルや経験を身に着けて、職業人生を乗り越えて行こうと。その意味では成長実感というか、想像していたより物足りない、不満はないけど不安がある。これが積もり積もって転職した方がいいんじゃないかと」
■変わる仕事観…これからの働き方
実際、いまや若手社員の83%が、「終身雇用」を期待していないというデータもあります。その若手社員は…
若手社員・街録(社会人8年目)「4月から転職したばかり。自分がもっと成長したいっていうのもありました」
若手社員・街録(社会人5年目)「今後のキャリアとか心配な面も出てくるので、転職で経験を積んでいきたい」
大きく様変わりした今の仕事観。その影響とは…
古屋星斗氏(リクルートワークス研究所主任研究員)「日本って、企業が人を育ててきたんですよね。この強みというのが、日本企業を力強く押し上げた時代があった、もう数十年前の話ですけれども。しかしながら今、企業が若者を育てる力が弱まっています。次代を担う若者たちをどうやって、誰が育てていくのかという新しい問題が浮かび上がってきています」
果たして今後、日本の「働き方」はどう変わっていくのでしょうか―。
(「サンデーモーニング」2024年4月7日放送より)