「新プロジェクトX」放送開始!元職員が指摘するNHK内の
4月6日、東京スカイツリーの建設工事を巡るドラマを描いた「新プロジェクトX」の初回が放送された。当日朝には「放送直前スペシャル」で過去の“神回”を振り返るなど、力の入れようが伝わってきた。
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! 一方、NHKの元職員は「プロジェクトX」と後継番組「プロフェッショナル」には危うさがあると指摘する。NHKは捏造や過剰演出が問題となった過去を忘れてはいないか──。
NHK放送センター内で開かれた「極秘説明会」
2023年10月某日、クリエイターセンター(旧制作局)内で緊急の極秘説明会が開催されました。報道発表に先立って「プロジェクトX」の復活の周知が行われたのです。
少なくとも2年は放送を続ける想定で、この説明会では、各部局からの参加募集もなされました。既に“精鋭”たちが新たに作られた特命プロジェクトに招集されているようです。
ちなみに、クリエイターセンターというNHKらしからぬ組織名は、2021年度に当時の前田会長の意向をくんでディレクター等の放送系職種を「コンテンツ・クリエイター」とカテゴライズしたことに伴って命名されたものです。
この件については、私の元には若手からベテランまで多くの職員たちから「番組復活にはたまげました」といった驚きの声が届きました。というのも、テーマが「バブル崩壊後の“失われた時代の挑戦”」と発表されていますが、毎週放送だと仮定して100近くも番組化が可能なプロジェクトがあるとは思えないからです。
それに、不祥事が相次いで打ち切りのような形で終わった番組ですから、決して好感度の高い番組でもありません。さらに言えば30代以下の若手職員からすると、小学生のころに授業中にビデオを見たくらいの印象しか残っておらず、いざ作ろうにもピンと来ないようです。
神格化された「プロジェクトX」の異様さ
ジャニーズ問題も含めて苦境に追い込まれているNHKは、プロジェクトXに大きな期待を寄せているのかもしれません。しかし特番を数本作ることはできたとしても、レギュラー番組として名声を獲得して「NHKの救世主」になるとは現段階では私には到底思えません。
では、なぜ「プロジェクトX」が復活することになったのでしょうか?
「映像の世紀バタフライエフェクト」の好評を受けて二匹目のどじょうを狙ったのもあるでしょうけど、現在のNHKの幹部たちの顔ぶれを見ると、別の理由が浮かび上がってきます。
若い頃に旧「プロジェクトX」の制作にディレクターを担当した経験が“ある人物”が、番組制作セクションの現在の幹部に名を連ねているのです。彼らからは、何かにつけて「Xは大変だった!」と苦労自慢を聞かされたものです。飲みの席で目を輝かせながら「プロジェクトX」に関与したことを誇る姿を、私はいつも覚めた目で見ていましたが……。
目の前の番組より、過去の終わった番組のことがそんなに大事なのかよ、と。そんな「プロジェクトX」人脈が、今なおNHKの番組制作を支配していると言っても過言ではありません。
プロジェクトXという「出世ルート」
NHKでは毎年、主に新しいレギュラー番組の立ち上げを狙った番組の企画提案募集が行われます。この募集にどんな企画を出せるかで査定も変わってきます。
今年の7月に発出された内部向けの提案募集文を入手することができたので中身を確認してみると、「これぞNHK」と視聴者をうならせるような、高品質の“フラッグシップコンテンツ”を求める旨が記述されていました。
この内部文書では、質だけでなく、「ブラタモリ」や「チコちゃん」のような認知度高いコンテンツを開発することも求められています。となったとき、新規の企画案をゼロベースで作り上げるよりも、既に知名度があって、自らのプライドの源泉にもなっている「プロジェクトX」に幹部たちはすがったのかもしれません。
既に名前が挙がっている“精鋭”の顔ぶれを見ても、「プロジェクトX」人脈のお気に入りのディレクターたちであることは間違いありません。
NHKの番組制作セクションにおける、出世ルートとして新「プロジェクトX」を定着させるためにも、失敗は許されないと思います。
かつての「プロジェクトX」は、誰もが知る製品開発や公共事業など様々なビッグプロジェクトを多く題材に取り上げていました。その背景にある無名の人たちの山あり谷ありの“人間ドラマ”を、当事者へのインタビューや再現ドラマ風のイメージ映像とともに、特有のナレーションで煽り立てていくことで視聴者の関心を引き付ける番組でした。
「バカでも作れるフォーマット」
プロジェクト進行に次々と壁が立ちはだかり、頓挫するかという瀬戸際でヒーローとなるキーパーソンが知恵・勇気・執念で乗り越えていく番組構成が基本です(一部、例外もありましたが)。
実は、この番組構成を、旧「プロジェクトX」立ち上げ責任者のひとりは、「バカでも作れるフォーマット」と局内で自慢げに講演していました。しかし、この「フォーマット」には危うさもあります。
構成を「フォーマット」に当てはめようとするために、過剰演出や事実と反する情報を伝えてしまうリスクがあるのです。中でも、合唱部が全国で金賞を取るまでの軌跡を描いた際には、荒れていない高校を、荒くれ者が集まった“無法地帯”かのように描いたことで、NHKが公式に謝罪する事態に及びました。
興味のある方はWikipediaなどにも旧「プロジェクトX」の“捏造”や“過剰演出”がまとめられているのでご覧頂ければと思いますが、実は、表になっていないだけでそうした事例は他にも多数あったとみられます。
『「新プロジェクトX」は大丈夫なのか…元NHK職員が警鐘を鳴らす「捏造」「過剰演出」の危険性〈過去の製作者たちが懺悔〉』に続く…
暗部ちゃん(TVコラムニスト)
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