県の女性支援計画 相談窓口情報の周知徹底を(2024年4月6日『茨城新聞』-「論説」)

 貧困やドメスティックバイオレンス(DV)、性暴力被害など困難な問題や悩みを抱える女性たちを支援するため、県は基本計画を策定した。相談しやすい仕組みづくりを進めるほか、民間団体と連携し、その豊富な経験やノウハウを生かして女性が安心して暮らせる社会の構築を図っていく。

 この基本計画は、国の「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」に基づき策定した。

 基本目標として、①女性が相談しやすい体制づくり②回復と自立に向けた支援体制の整備③計画の総合的推進の3項目を掲げ、「女性の人権が尊重され、女性が安心して、自立して暮らせる県」の実現を目指している。

相談体制づくりでは民間団体と連携し、多様な仕組みを検討。市町村の相談体制の強化 に向けた支援も進め、現在4市にとどまる女性相談支援員の配置を2026年度までに10市町村に拡充する。

 自立支援では、配偶者からの暴力やストーカー被害を受けるなどした女性の一時保護を委託する民間シェルターを現在の3カ所から5カ所に増やす。孤立防止に向けた居場所づくりを促し、生活困窮者やひとり親家庭への支援のほか精神的・心理的ケアを必要とする女性を支援するため専門機関との連携も深めていく。

 基本計画を総合的に推進するためには、関係機関や専門家でつくる「支援調整会議」も新たに設けて、ケースごとの状況を把握しながら本人の意思を尊重した支援方針を検討。相談に携わる相談員や職員向けの研修も充実させる。

 日本はまだまだ女性にとって生きにくい社会である。特にコロナ禍ではDV相談件数や女性の自殺者が増え、女性を巡る課題は多様化、深刻化が進んだ。性暴力の被害も後を絶たず、悩みを抱えながらも誰にも相談できず孤立している女性は少なくない。

 深刻な問題の解決は容易ではないが、悩みを抱えた女性のプライバシーを尊重しながら、いかに寄り添い、親身に相談に乗って問題を解きほぐしていくかは重要だ。

 県が2023年7月に実施したネットモニター調査では5割以上の女性が「自力では解決できない問題に直面したことがある」と回答している。

 その内容は、「育児・家事の負担」や「家庭不和」「生活困窮」「職場でのハラスメント」「離婚問題」が多かった。「職場でのセクハラ・マタハラ」「ストーカー被害」「性暴力被害」「リベンジポルノ」の被害も男性を大きく上回る。母子家庭の母親の収入は父子家庭の父親の5割程度にとどまり、就業する約4割の母親が非正規雇用という状況だった。

 こうした困難な問題や悩みを抱える女性たちを支援するために相談窓口や支援体制を充実させることは重要だ。

 ただ、悩みを抱える女性たちがその相談窓口の存在を知らなければ機能することはできない。

 同調査でも女性の約6割が相談窓口について「知っているものはない」と答えている。相談したくても相談できず、相談できるところさえ知らない女性が少なくないことを示している。

 このため県は「困っている人にいかに情報を届けるかが大事」と説明し、周知を徹底していく考えだ。各市町村とも連携し、情報が女性たちに確実に届くよう知恵を絞ってほしい。