報告書1枚「つまびらかにならず」 裏金処分幕引きに党内外反発(2024年4月5日『毎日新聞』)

自民党本部=曽根田和久撮影

自民党本部=曽根田和久撮影

 自民党は5日、派閥の裏金事件に関係した議員の処分決定に先立ち実施した安倍派幹部への追加聴取の結果を野党に書面で報告した。報告書はA4判1枚で、裏金が続いた経緯は追加聴取でも「つまびらかにならなかった」などとした。自民はこれを節目に経緯究明の幕引きを図り、再発防止策の論議などへと移りたい考えだが、野党は反発。自民内にも処分の再審査を求める動きがあり情勢は流動的だ。

 自民は参院予算委員会理事懇談会で、3月26、27日に岸田文雄首相(自民総裁)が安倍派の塩谷立・元文部科学相ら4人に実施した追加聴取の報告書を提出。会長だった安倍晋三元首相が現金による還付取りやめを指示しながら、安倍氏の死去後還付が復活した2022年の経緯について「具体的に誰が還付の継続を主導し、どのような議論を経て、還付の継続が決まったかは、つまびらかにならなかった」とした。還付がいつ始まったかについても「明確には判(わか)らないが、相当以前から行われていたとの話があった」と記したのみだった。

 岸田首相は5日の衆院内閣委員会で、4日に関係議員ら39人に対して行った党内処分を巡り「大きな政治不信を招いた責任を党として厳正に処分した」と説明。野党が裏金事件のキーパーソンではないかと指摘する安倍派会長経験者の森喜朗元首相に自ら電話で事情を聴いた時期は「今週頭」で、森氏への聴取でも「従来から党として把握していた事実以上のことは何も確認されなかった」とした。

 立憲民主党安住淳国対委員長は5日、記者団に対し、自民の処分は「甘い」と批判。特に岸田首相が、関係者が起訴された岸田派の元会長で自民の最高責任者でもあるにもかかわらず処分対象から外れたことについて「(岸田首相は)『最後は党員や有権者が判断することだ』と(自身への処分を)突っぱねた。だったら解散総選挙するしかない」とし、今国会中に内閣不信任決議案を提出する可能性に言及した。

 自民でも今回最も重い「離党勧告」処分を受けた塩谷氏が5日、記者会見し、党への再審査請求を検討すると表明した。「(処分の)理由を明確にしていただきたい」とし、安倍派の対外的トップ「座長」だった自身への厳罰ありきだった党執行部の姿勢を批判した。【樋口淳也、源馬のぞみ、遠藤修平】