自民党派閥の政治資金規正法違反事件を巡り、安倍・二階両派の議員ら39人への党の処分が4日、決まった。処分に反発したり、神妙な態度を見せたりと議員たちの反応は様々。一方、資金還流を巡る事実関係が解明されないまま、問題の幕引きが図られたことに、有権者らからは厳しい批判の声が聞かれた。
[深層NEWS]自民39人処分、御厨貴氏「曖昧な処分は危機コントロールできていない表れ」
「議員辞職すべきだ」突き放す声
「今回の問題はいくつかの派閥が関わっていた。(処分対象について)なぜそこで線を引いたのか理解できない」。処分対象者の中で最も重い「離党勧告」を受けた安倍派元座長の塩谷立・元文部科学相は、記者団に不満そうな表情を見せた。
今回の処分対象は、〈1〉所属議員の多くに不記載があった派閥の幹部〈2〉2018~22年の5年間で、政治資金収支報告書への不記載額が500万円以上の議員ら――。塩谷氏の言葉には、安倍・二階両派のみが処分対象になるよう「線引き」されたのでは、との疑念がにじむ。
一方、塩谷氏と同じく離党勧告を受けた安倍派参院側元トップの世耕弘成・前参院幹事長は「幹部が政治的責任を取らない限り、国民の納得が得られない」と処分を受け入れる姿勢を強調。離党届を提出したことも明らかにした。
だが、地元・和歌山市で日本茶販売店を営む永原敏行さん(67)は「金の使途について十分な説明がなく、けじめをつけるための処分は当然。二階俊博・元幹事長も含め、和歌山の政治家に悪いイメージがついてしまったのはとても残念だ」と冷ややかに語った。
今回の問題は、衆院3補欠選挙(16日告示、28日投開票)に影を落としており、自民党は島根1区以外の公認候補の擁立を見送ることを決めている。
細田博之・前衆院議長の死去に伴う島根1区補選では、自民のほか、立憲民主党が候補擁立を決めており、事実上、与野党の一騎打ちとなる見込み。自民党県連の 絲原いとはら 徳康幹事長は「逆風が吹いて厳しい。処分は一定のけじめとなったが、信頼回復は今後の大きな問題になる」と危機感をあらわにする。
柿沢未途・前衆院議員の辞職に伴う補選が行われる東京15区(江東区)では、離党した柿沢氏を含め、政治家による不祥事が相次ぐ。自民党は、地域政党「都民ファーストの会」が国政進出を目指して設立した「ファーストの会」の新人候補を推薦する方針だ。地元の自民関係者は「自分たちの党のことで政治不信を招いたことは遺憾だ。支援者には謝るしかない」と声を落とした。
中北浩爾・中央大教授(政治学)の話 「新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言中にクラブ通いをした議員が離党勧告を受けたケースと比べると、全般的に処分が軽い。同じ安倍派の元幹部でも処分内容に差があり、アンバランスさが目立つ。岸田派の元会計責任者も有罪が確定しており、派閥を率いてきた岸田首相自身も責任を取るべきだ。政治資金規正法の改正で議員も責任を負う『連座制』を導入しない限り、国民の信頼は回復できないだろう」
トレンド評論家の牛窪恵さんの話 「処分対象を(不記載などの金額が)500万円以上の議員らに限定し、党トップの岸田首相を処分しなかったことは、国民感情としては納得がいかない。若者たちに話を聞くと、処分を受けた議員も数年たてば元のポジションに戻ると冷めた見方をしている。ずさんな会計処理に対し、この程度の処分では、物価高で生活が苦しい国民の怒りは収まらない」