英語は通じず、時には暴力も 海外売春経験の女性「命の危険感じた」(2024年4月4日『毎日新聞』)

ホストクラブ通いで抱えた借金を返済しようと、売春のためにマカオに渡航した女性=東京都新宿区で2024年4月3日午後6時16分、加藤昌平撮影
ホストクラブ通いで抱えた借金を返済しようと、売春のためにマカオ渡航した女性=東京都新宿区で2024年4月3日午後6時16分、加藤昌平撮影

 海外で売春した日本人女性は現地でトラブルに巻き込まれるケースもある。日本国内に複数あるとされるあっせんグループの一つを通じて、マカオで数日間、売春した東京都内の40代女性は客の暴力におびえていたという。

 「海外で800万円も稼いできた人がいるんだよ」。女性は新宿・歌舞伎町のホストクラブに通い、多額の借金を抱えていた。するとホストは「海外売春のエージェント」を名乗る男性を紹介してきた。

 米国やオーストラリアなど複数の渡航先を示された。不安もあったが、日本から最も近いマカオを選び、2023年6月、現地に降り立った。

マカオに渡航した女性が働いていたサウナ施設の入り口=女性提供
マカオ渡航した女性が働いていたサウナ施設の入り口=女性提供
 

 仕事場は郊外のホテルの地下にあるサウナ施設だった。勤務は夕方6時から翌朝5時まで。ステージのようなところに立ち、男性客の「指名」を待った。女性は「他にも日本人の女性が働いていた」と証言する。

 客とはサウナ施設に隣接する個室で過ごした。英語が通じないことが多く、時には暴力を振るわれたり、避妊具を使わないよう求められたりすることもあった。「客の前では常に命の危険を感じた」といい、数日で体調を崩し、渡航から1週間後に帰国した。

 報酬は全てエージェントに送金され、一部がホストに紹介料として支払われていたようだった。すぐに帰国したためか、女性は航空機のチケット代すら受け取れなかった。「二度と海外で売春はしない」と後悔している。

郊外のホテルに向かう途中、タクシーの窓越しに女性が撮影したマカオの街並み=女性提供
郊外のホテルに向かう途中、タクシーの窓越しに女性が撮影したマカオの街並み=女性提供
 

 異国での売春は危険と隣り合わせだ。香港英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」日本特派員で海外売春の取材経験があるジュリアン・ライオール記者は「現地では日本人女性は不法就労だとつけ込んで、犯罪組織が繰り返し売春を強要したり、報酬を支払わなかったりすることもあるのではないか。現地に女性を保護する制度はなく、海外での売春はリスクが高い」と警鐘を鳴らす。

 性風俗などで働く女性の被害回復に取り組む斎藤理英弁護士(東京弁護士会)も「海外での売春には日本の反社会的勢力が関与しているとみられるが、そういった構造は表に出にくい。女性にも危険な行為だと認識してもらう必要がある」と話す。

 警視庁の捜査幹部は「客に違法薬物の使用を強要されたり、現地の捜査当局の取り調べを受けたりする女性もいる」と注意を呼びかけている。【加藤昌平】