悪質ホスト 搾取許さぬ対策が急務(2024年3月22日『北海道新聞』-「社説」)

 若い女性客に法外な料金を請求し借金を背負わせる悪質なホストクラブによる被害が、東京・歌舞伎町から地方に広がっている。
 札幌・ススキノではホストの男性への支払いが1千万円を超え、返済のため性風俗店で働きづめになり健康を損ねた女性客もいる。
 性搾取と言うべき深刻な被害を生む商法を野放しにできない。国は対策を急ぐべきだ。
 ホストクラブで頻繁に行われる手口が売掛金、いわゆるツケ払いだ。ホストが「ツケでいいから」と高級シャンパンなどを女性客に次々と注文させる。
 ツケがたまり返せなくなれば性風俗店で働くよう誘導したり、強要したりするとされる。
 社会経験の浅い若者に支払い能力を超える債務を負わせ、性を売り物にさせるのは許されない。
 借金の返済のため女性を性風俗店で働かせるなどの行為は、売春防止法職業安定法違反に当たる可能性がある。
 悪質ホストクラブは犯罪組織の資金源になっている疑いもある。
 昨年末の道警の立ち入り検査では、料金表示などが不適切な違反が多くで見つかった。警察は法令を駆使して取り締まり、背後関係も追及してもらいたい。
 ただ、現行の法令では限界もあろう。立憲民主党は、被害防止の徹底を国や自治体に求める対策法案を提出している。国会は議論を尽くさねばならない。
 ホストクラブは、コロナ禍で空いた店舗を使う形で急増している。歌舞伎町を拠点とするホストクラブが、ススキノに相次ぎ進出する状況もあるという。
 警視庁が昨年、歌舞伎町で売春の客待ちをしていた女性たちを摘発したところ、多くがホストクラブへの支払いを理由に挙げた。
 社会に居場所を見いだせず、孤立感をホストクラブで埋めようと通う客も少なくないようだ。
 店ではホストが女性客に恋愛感情を抱かせて大金を使わせる例が目立つ。そうした契約は「デート商法」と呼ばれ、消費者契約法に基づき取り消せる可能性がある。
 関係機関は相談窓口の広報に努める必要がある。
 昨年12月、歌舞伎町のホストクラブの経営者らが売掛金を今年4月からなくす方針を表明した。徹底が求められる。
 2年前の成人年齢の引き下げで18歳から自分で契約ができ、責任も伴うようになった。
 周囲や学校が社会に潜む危険を教えることも大切だ。