【記者会見での発言】
「申し訳なく心からお詫び」
「大きな区切りを迎えた」
「ことばの問題 不徳の致すところ」
発言した内容について「ことばの問題で、議会やマスコミ、県民の方からアドバイス含めてご批判をいただき、その都度、以後、このようなことがないようにと努めてきたが、みずからの不徳の致すところだ」と述べました。
その上で「県民の皆様に対する気持ちは常に、尊敬と敬愛と心はひとつで、とくに弱い立場にいる人たちのために働いてきたつもりだが、心を傷つけられた人がいるとすれば、本当に本意ではなく、心からおわび申し上げたい。どうか、自分のお仕事に誇りと使命をもって続けてください」と述べました。
「リニア みんなが喜ぶ形になればいい」
- 注目
辞職理由 みずからの発言とリニア延期で区切り
「リニアは私の手をもう離れた」
県議会との関係も理由に
任期の途中で辞職する理由を問われたのに対し「1番の大きな公約はリニアの問題を任期中に決定することだった。一方で、県議会も私の言動が一因になり、政局がらみで動くというのが常態化して、これはなんとか解決したいと思っていた」と述べ、県議会との関係も理由に挙げました。
「出直し選挙なんてとんでもない」
再び知事選に立候補する考えがあるかどうか問われたのに対し「まったくない。私はもう十分仕事をした。4期目は、リニアが非常にヒートアップした争点になり、県民のためになる形でJR東海に、思い切って正直な話をしていただき、ひとつの解決をみた。出直し選挙なんてとんでもない。まったく考えていない」と述べました。
「後継候補として立候補を求めたわけではない」
退職金「規則どおりにしていく」
退職金を受け取るかと質問されたのに対し「しかるべき委員会で勧告があり、これに従うということでこんにちに至っている。どういう形になるか、規則どおりにしていく」と述べました。
「辞表提出は6月定例会のちょっと前」
辞表を提出する時期について問われたのに対し「辞表の提出は6月の定例会のちょっと前になるかもしれない。辞表を出して、それを受け取った議会が判断するので、定例会で私の説明を聞いて、そこで可否を議論されて、可決されれば辞職できるという段取りになっている」と述べました。
また「定例会の冒頭でお許しを得て、お礼とごあいさつの機会を得たいと思っている」と述べました。
辞職決意までの経緯は
静岡県の川勝知事は1日、新人職員への訓示の中で「県庁というのは別のことばで言うとシンクタンクです。毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたりするのとは違って、基本的に皆さんは知性が高い方たちです」などと発言しました。
この発言が、職業差別発言とも捉えられかねないとして波紋が広がり、川勝知事は2日夜、記者会見し「職業差別はありません。もし、そのことで不愉快な思いをされたとすれば 誠に申し訳ないと思う」と述べました。
そのうえで「どうしたらいいかと考えたんですけど、ことしの6月議会をもって職を辞そうと思う」と述べて突然、任期途中で辞職する意向を表明しました。
一夜明けて、川勝知事は3日午前10時半すぎ、知事公舎を出る際に、記者団から「どうして辞意を表明したのか」と質問されたのに対し「午後3時半に記者会見します」とだけ述べて、車に乗り込み、県庁に向かいました。
県に批判や苦情 1400件余
静岡県によりますと、川勝知事が新人職員への訓示の中で、職業差別とも捉えられかねない発言をしたことに対し、きのうから「許せない」とか、「農業をばかにしているのではないか」といった批判や苦情が電話やメールなどで相次いでいるということです。
3日午前中だけで972件にのぼり、2日の分と合わせると1404件になり、ほとんど否定的な意見だということです。
《静岡県内の自治体の反応》
御殿場 勝又市長「差別的な発言と取られても否めない」
静岡市 難波市長「今回は信じがたいレベルで逆に心配」
静岡県の川勝知事が辞職の意向を表明したことについて知事のもとで副知事を務め、リニア問題も担当した静岡市の難波喬司市長は、記者団に対し「副知事をしていたころにも不適切な発言はあったが、今回は信じがたいレベルで、どうされてしまったのかと逆に心配している状況だ」と話しました。
そのうえで、JR東海が開業を目指すリニア中央新幹線について「JR東海の経営判断にみずからの意見を言うなど適切でない発言が多かった。県は前に進む姿勢で臨むべきだと思う」と述べました。
さらに、望まれる知事の姿勢については、「発言などで時間を取られることなく、しっかりとした行政経営ができる方に知事になっていただきたい」とする考えを示しました。
浜松市 中野市長「優劣をつけるような話いかがなものか」
島田市 染谷市長「突然の表明で大変驚いた」
《JR東海、国、周辺自治体などの反応》
JR東海「工事着手に向け真摯に取り組む」
林官房長官「コメントすることは差し控える」
愛知 大村知事 “発言が事実なら許されないこと”
名古屋市 河村市長「早く工事を進めてほしい」
名古屋市の河村市長は「川勝知事の発言は、ラーメン屋のおやじのように苦労して雇用を守って税金を納めている人を大事にするという私の考えとは真逆だ。個人を批判したくはないが、川勝さんはエリートなので、そのような発言が出たのではないか」その上で、辞職する意向を表明したことについては「びっくりしたが、苦しみから逃れたかったのではないか」と述べました。
また、川勝知事が静岡県内での着工を認めていないリニア中央新幹線をめぐっては「知事がかわれば普通は工事は進むと思うが、大井川は大切で、命の水として重要だ。JR東海は、静岡の人が、うまい水を飲めるように頑張るという気持ちを持ってほしい。リニアができることは名古屋にとっては多くの人が集まり、ありがたいことなので、早く工事を進めてほしい」と述べました。
立民 渡辺氏 “後継候補の話もいまは国会議員の職務に専念”
静岡県の川勝知事が辞職する意向を示したことについて、立憲民主党静岡県連の顧問を務める渡辺周・衆議院議員は川勝知事から後継候補として知事選挙に立候補するよう求める趣旨の話があったと明らかにし、いまは国会議員の職務に専念したいという考えを示しました。
2日静岡県の川勝知事が辞職する意向を示したことを受けて、立憲民主党静岡県連の顧問を務める渡辺周・衆議院議員は3日午前、国会内で記者団の取材に応じました。
この中で渡辺氏は、2日辞職の意向を表明する直前に川勝知事から電話を受けたことを明らかにし「リニア中央新幹線の開業時期の延期がはっきりし、自分の責任は果たしたので近く職を辞すということだった」と述べました。
その上で「『あとをやってくれ』という直接的な話はないが、今後の話について含みのある形で言われた」と述べ、川勝知事の後継候補として知事選挙に立候補するよう求める趣旨の話があったと明らかにしました。
一方で「政権交代に向け党の安全保障政策などを取りまとめる側にいる。いまは目の前のことに誠心誠意まい進したい」と述べました。
またリニア中央新幹線をめぐって、県がトンネル工事によって県内を流れる大井川の水量が減ることなどを懸念し、着工を認めていないことについて「ここまで来てやめることはありえない。JR東海や国が責任を持ってやるべきで、もし何かあった場合、施工者側が何らかの責任を取る覚書が必要だ」と述べました。
川勝平太氏とは
川勝平太氏は京都府出身の75歳。
早稲田大学政治経済学部教授や浜松市にある静岡文化芸術大学の学長などを務めたあと2009年の静岡県知事選挙で初当選し、現在4期目です。
川勝知事は2021年6月の県知事選挙期間中の集会でみずからが学長を務めていた大学の学生について「8割ぐらい女の子なんです。11倍の倍率を通ってくるんですから、みなきれいです」などと女性の学力と容姿を結びつけるような発言をしていたことが明らかになり、その後、謝罪して発言を撤回しました。
また、この年の10月の参議院補欠選挙の応援演説で、対立候補が御殿場市長を務めていたことに関連し、「あちらはコシヒカリしかない」などと発言したことを受けて県議会で辞職勧告決議が可決され、川勝知事はその年の12月の給料とボーナスの合わせて440万円余りを返上する意向を示していました。
しかしその後、給与などを返していなかったことが明らかになり、去年7月には県議会で50年ぶりとなる不信任決議案が出され1票差で否決される事態にまで至りました。
川勝知事は、この月の定例会見で、自身の不適切な発言がたびたび問題視されることについて「私の不徳のいたすところだ。常に公人の立場でいる。今度、迷惑をかければ辞職する」と述べていました。
リニア中央新幹線巡り国に反発
川勝知事といえば、“夢の超特急”リニア中央新幹線に異を唱える知事として知られています。
リニア中央新幹線のトンネルが南アルプスの地下深くで地元では「命の水」とも呼ばれる大井川の源流の下を貫くように計画されていることから、2017年に水資源や自然環境などへの影響を懸念して着工に異論を唱え始めました。
その後は静岡県内での着工を認めず、静岡特産の茶の生産者など大井川流域の人たちの暮らしを守り南アルプスの環境を保護すると訴え、県知事選挙では県民の圧倒的な支持を得て、舌鋒鋭く国やJR東海をへの反発を繰り返してきました。
その後、トンネル工事で県外に流れ出る大井川の水を県内に戻すいわゆる「全量戻し」の方策などをJR東海が打ち出したことなどから、去年、国の有識者会議でもJR東海の対策を整理した最終報告をまとめ、大井川流域の自治体で作る協議会も着工に向けて動き出すことを要請していました。
しかし、川勝知事は、生物多様性や工事の際の発生土置き場など30項目について、「今後も議論する必要がある」として納得せず、工事の着工を認めていない状況が続いています。