スポーツが与える力(2024年3月29日『佐賀新聞』-「有明抄」)

 甲子園で開催中の選抜高校野球大会、いわゆる「センバツ」は今年で96回目。ただ、戦争で中止になった年があるため、今大会は100年の節目に当たる

◆1924年の第1回大会は名古屋市で開かれ、8校が出場した。前年の23年9月に関東大震災が発生。焦土と化した関東からは早稲田実業が出場し、準優勝している。100年前、球児たちの活躍に元気づけられた被災者も多かっただろう

能登半島地震から間もなく3カ月。前を向いて歩き始めた被災者に、モノに加え「心のエネルギー」を支援できたらと思う。その手段にスポーツや音楽がある。阪神大震災が起きた95年のセンバツでは地元神戸の神港学園が8強に入った。今大会では石川県の星稜がきのう、準決勝進出を決めた

◆人は「誰かのために」と思う時、持てる力以上のものを発揮する。星稜の選手にも「今度は自分たちが支える番」と秘める思いがあったろう。その姿が見た人の心に“元気の灯”をともす。音楽もそう。石川県では復興支援のコンサートが開かれ始めている。今年のセンバツの入場行進曲はあいみょんさんの「愛の花」だった。♪〈空が晴れたら逢いに逢いに来て欲しい/涙は枯れないわ明日へと繋(つな)がる輪〉

◆人が人を思う力が涙を乾かしたり、背中を押したりする。復興の後押しへ星稜ナインも頑張って。(義)