くも膜下出血で寝たきりの医師 労災認定を求め国を提訴へ(2024年3月29日『毎日新聞』)

 
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宿直を労働時間から除外した東京労働局の判断について「労働時間の過小認定の行きつく先だ」と批判する川人博弁護士(右端)ら男性側の代理人弁護士=東京都千代田区で2023年9月、宇多川はるか撮影
宿直を労働時間から除外した東京労働局の判断について「労働時間の過小認定の行きつく先だ」と批判する川人博弁護士(右端)ら男性側の代理人弁護士=東京都千代田区で2023年9月、宇多川はるか撮影

 くも膜下出血で寝たきりの状態になり過重労働で労災申請するも、宿直を労働時間から除外され労災が認められなかった50代の男性医師が、近く労災認定を求めて国を提訴する。男性側への取材で判明した。男性側は厚生労働省の労働保険審査会に再審査を再請求していたが、審査会は宿直をほぼ労働時間と認めず、1月に請求を棄却していた。

 東京都内の大学病院の緩和医療科で勤務していた男性は、40代だった2018年11月にくも膜下出血を発症。翌19年10月に三田労働基準監督署に労災を申し立てた。

 男性側は宿直を時間外労働と認めるよう主張していた。パソコン内に残る記録などから、発症前の1~6カ月の時間外労働は月4日程度の宿直を含めると、毎月126~188時間に上り、月80時間とされる「過労死ライン」を超えていたためだ。

 一方、労基署の判断は午後5時15分~翌朝8時半(15時間15分)の宿直のうち、6時間は「仮眠が取れた」として労働時間から差し引くもので、労災は認められなかった。

 男性側はこの決定を不服として、東京労働局の労働者災害補償保険審査官に審査を請求した。だが、審査官は、宿直時間の全てが労働時間ではないと判断し、請求は棄却された。

 今回の再審査では、宿直のうち、患者のみとり対応に当たった日の4時間51分は労働時間と認められた。ほかにはカルテを取り扱った時間(1分)なども認められたが、1回の宿直の15時間15分のうち労働時間として加算されたのは1時間未満だった。

 その結果、発症前3カ月の時間外労働は月50時間前後とされた。宿直時間の大半は「待機を主とするもの」などとして労働時間と認められず、請求は今年1月19日付で棄却された。

 男性側代理人の蟹江(かにえ)鬼太郎弁護士は「(男性医師が)宿直中もストレスの多い業務にあたっていたと裁判で問いたい。時間外労働の上限規制の形骸化にも警鐘を鳴らしていきたい」と話した。【宇多川はるか】