「努力し、負担を分かち合って初めて守ることができる」(2024年3月19日『山形新聞』-「談話室」)

▼▽群馬県の山間部にある村で3人兄弟の長男として生まれた。睦(むつ)まじい家族の暮らしが暗転したのは小学3年生の時。父親が交通事故で亡くなり、一家は窮乏した。以降、働きづめの母親が寝ているのを見たことがない。

▼▽貧しさ故に高校進学も諦めかけたが交通遺児育英会などの奨学金で学びを続けることができた。この生い立ちが教育環境の整備を信条とする政治家の礎となる。下村博文文科相のことだ。失礼ながら地味な印象のベテラン議員だが、昨日はスポットライトを一身に浴びた。

▼▽自民党安倍派の裏金事件を巡る政治倫理審査会に同派の元会長代理として自らの意思で出席。他の幹部が、裏金づくりの発端を知り得る立場の森喜朗元首相に忖度(そんたく)するような発言に終始する中、同氏と距離を置く下村氏が真相を暴露するのではないかという見立てがあった。

▼▽ふたを開ければ、保身の色濃く、核心は曖昧だった。裏金でも政治活動と言い張れば税負担を免れる仕組みに国民は憤っている。誰もが幸せになれる可能性に満ちた国は「努力し、負担を分かち合って初めて守ることができる」。自身のサイトに綴(つづ)った氏に期待し過ぎたか。