世界初の実用的カメラとされるダゲレオタイプ…(2024年3月14日『毎日新聞』-「余録」)

家族写真の加工が波紋を広げたキャサリン妃(右)とウィリアム皇太子=ロンドンで2023年11月21日、ロイター

家族写真の加工が波紋を広げたキャサリン妃(右)とウィリアム皇太子=ロンドンで2023年11月21日、ロイター

「ディープフェイク」とも呼ばれる合成動画の作成時に顔面に映し出された緑のワイヤフレーム=ロンドンで2019年2月12日、ロイター

 世界初の実用的カメラとされるダゲレオタイプ銀板写真)の発明がパリで発表されたのが1839年。日本にももたらされ、坂本龍馬ら幕末の志士の姿が撮影された

▲米国では同時代のリンカーン大統領の写真が残る。南北戦争当時に撮られたという威厳ある立ち姿の一枚はかつて教室にも飾られたそうだ。しかし、今では別人の写真の顔だけを変えた「合成写真」と判明した

▲画像編集ソフトや画像生成AIの登場で問題化する「フェイク画像」は黎明(れいめい)期から存在していたわけだ。肖像写真には修整が付き物だったという。見栄えを良くしたい心理はいつの時代も変わらない

▲英王室では写真加工が波紋を呼んだ。英国の「母の日」の10日に公表されたキャサリン妃と3人の子がほほえむ家族写真。ウィリアム皇太子の撮影とされたが、修整の跡が見つかり、通信社が配信を取り消した。キャサリン妃は「私も編集でいろいろ試すことがある」と加工を認め、謝罪したものの収まらないメディアもある。1月の手術後、病名を明らかにせず、なかなか姿を現さなかった。何かを隠したと疑っているのだ

▲卒業式シーズン。昔は集合写真に欠席すると、背後に丸囲みの顔写真で掲載されたが、今は同級生たちに交じった姿を合成するそうだ。仲間外れにさせない写真加工の有効利用だろう。一方で素人には見分けがつかない修整技術には悪用のリスクがつきまとう

キャサリン妃は家族の姿を見栄え良く国民に見せたかっただけと信じたいが……。