自民党の石破茂元幹事長は26日午前、衆院予算委員会で持論でもある防災・減災専門官庁や避難シェルター整備の必要性について岸田文雄首相に迫った。
石破氏が予算委に登壇するのは昨年2月以来1年ぶり。報道機関の世論調査では次期首相候補として必ず名前が挙がる石破氏だが、この日は政権批判はなく、岸田首相を気遣う場面もあった。
■首相も3回答弁 「永田町が占拠された二・二六事件から88年。私は2月26日が来るたびに文民統制とはなんなのだと考えている」 石破氏は冒頭、こう切り出し、国の防衛政策の最終決定権を政治が支配する必要性に言及した。
「そんなことを考えている者は一人もいないと確信している」と述べた上で「いかにしてクーデターを防ぐかも大きな目的な一つだ」とも語った。
能登半島地震を受け、災害対応に関しては「イタリアで地震が起きると48時間以内にコンテナトイレ、テント、ベッドが来る。ボランティアのシェフがイタリア料理のフルコースを出す。絶望の淵にある人を励ますために必要という考えだ」と指摘。
一方で避難所の現状について「言葉を選ばずにいえば、雑魚寝の状態だ。100年前と変わらない。健康で良好な環境を得るのは、避難所に暮らす人の権利だ」と強調した。
これに対し、首相も避難所の支援体制について「おっしゃるように、体制や状況について不断の見直しが必要だ」と応じた。 平成25年10月以来9年4カ月ぶりに質問に立った昨年2月の予算委では、30分間の持ち時間のうち25分を持論の展開に充て、首相の答弁機会はわずか1回だった
。今回は首相も3回答弁し、お互いメモを見る場面もほとんどなく、「論戦形式」のやり取りとなった。
■「はしゃがないで」
自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受けて岸田内閣の支持率が低下する中、石破氏は知名度も武器に有力な「ポスト岸田」候補の一角を占める一方、党内の支持に広がりを欠く現状は改善されていない。
側近の一人は「いろいろな人が石破氏に『はしゃがないでください』と言っているのだが」と石破氏の発言を心配する。 昨年12月にはテレビ番組で、令和6年度予算案の成立後に首相退陣か衆院解散も選択肢になり得るとの考えを示した。自民党所属議員が首相の進退に言及するのは異例で、党内から不評を買った。
閣僚経験者は「一度は首相をやらせてあげたいと思っていたが、あの発言で終わってしまったかもしれない。自分たちが選んだリーダーが頑張っているときに後ろから鉄砲を撃つとは…」と周囲に漏らした。