西日本の河川に生息するオオサンショウウオは…(2024年2月24日『毎日新聞』-「余録」)

三重県名張市役所で展示されている交雑個体のオオサンショウウオ「弥助」=三重県名張市役所で2023年12月25日、山中尚登撮影拡大
三重県名張市役所で展示されている交雑個体のオオサンショウウオ「弥助」=三重県名張市役所で2023年12月25日、山中尚登撮影

 西日本の河川に生息するオオサンショウウオは、大柄な体や頭部が特徴的だ。題材にしたとみられる作家、井伏鱒二の短編「山椒魚(さんしょううお)」は体が大きくなり、岩屋から出られなくなった山椒魚の悲哀を擬人化して描いた

▲国の特別天然記念物である、その生き物を巡る動きだ。外来種のチュウゴクオオサンショウウオと、日本のオオサンショウウオと交雑した個体の双方が特定外来生物に指定される方向となった。外来種はかつて中国から食用に輸入され、一部が野生化した。日本在来種と交雑した個体が近畿や中国地方で広がり、放置すれば種の保全が危ぶまれるとの判断である

▲指定されると、無許可での移動などが禁じられる。専門家の西川完途・京都大学教授は在来種、外来種、交雑個体は体表の特徴などからでも識別が可能として対策の強化を求めてきた

▲「遅きに失したが、指定されれば前進です。見分けがつかなくても、発見したら関係する窓口に連絡してもらえれば」と語る。日本で捕獲されたチュウゴクオオサンショウウオからは、故郷の中国では野外絶滅した貴重種も最近になって確認された

▲食用やペットなど人の都合で生き物が輸入され、厄介者となってしまうケースは後を絶たない。生態系を乱す影響として、交雑による遺伝子汚染も深刻視されている

▲ユーモラスな外見は共通でも、外来オオサンショウウオの封じ込めを急がざるを得まい。グローバル化や、過去の安易な持ち込みがまたひとつ増やす、外来生物の岩屋だ。