クマ被害の対策強化 持続的管理の道探りたい(2024年2月9日配信『毎日新聞』-「社説」)

  • 背景には、餌となる木の実の生育が悪かった事情がある。個体数も増加しているとされる。
北秋田市のクマが出没した市街地=同市で2023年11月8日、菅沼舞撮影
北秋田市のクマが出没した市街地=同市で2023年11月8日、菅沼舞撮影

 さらに、人とクマの緩衝地帯となってきた里山や田畑が、過疎化によって荒廃し、クマの生息域が広がった。人家に近づき、果樹や放置されたごみを餌として食べるようになっている。

 自然界では、特定の種が増えすぎると、生態系のバランスが崩れる。専門家は「管理可能な個体数を維持するため、一定の捕獲は必要だ」と指摘する。

 高齢化に伴い狩猟者が減っている。人材育成を進めるとともに、広域的な協力の枠組みを作らなければならない。

 検討会は、人とクマの「すみ分け」も求めた。電気柵の設置や、人里の近くにあるやぶの刈り払い、果樹・ごみの管理には、市民の協力が欠かせない。

 人と野生動物のあつれきは、クマにとどまらない。

 国は、農作物を荒らすニホンジカとイノシシを指定管理鳥獣に定め、今年度末までの10年間で生息数を半減させる計画を立てた。だが、目標達成の見通しが立たず、期限を5年間延長した。野生動物の管理は容易ではない。