言葉を言い換えても…(2024年2月19日『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 「セクハラってさあ、絶対に男が考え出した言葉だよね」。飲み会の席で、酔っ払った先輩記者が突然こう切り出した。セクハラという言葉が「新語・流行語大賞」に選ばれた1989年ごろだったと思う

▼「何をいきなり?」と思いつつも、続きを聞いた。「だって女性の体を触るレベルだと、もう犯罪じゃん。それなのに『クライム(犯罪)』じゃなくハラスメントって言葉に矮小化(わいしょうか)してる。『そこまで目くじら立てなくても…』みたいなものが感じられるもん」

▼「セクハラ」の言葉の発祥については寡聞(かぶん)にして知らないが、先輩のいわんとするところは理解できた。「よろしくないこと」をやっている側が、その行為の本質をぼかしたり正当化したりするために、言葉を”薄め”たり言い換えたりする。決して珍しいことではない

▼「還付金を収支報告書に記載しない取り扱いの始期は不明だった」。自民党が行った「政治資金パーティー裏金事件」を巡る内部調査の報告書。ここにもあるようにあくまで「還付金」であって裏金ではないらしい。「若い人たちに活動費として還付する、プラスになる仕組み」と主張する議員も

▼折しも確定申告の時期。申告ミスから追徴税を課され落胆する人もいれば、わずかな還付金に喜ぶ人もいよう。むろん、こちらは正しい納税をした上で胸を張って受け取れるものだ。この還付金と、くだんの報告書に記されたものが同じ言葉という違和感…。