コロナ10波と能登 感染拡大への警戒強めよ(2024年2月14日『産経新聞』-「論説」)

 
地区の集会所で避難生活を送るお年寄り=1月21日、石川県珠洲市(鴨川一也撮影)

新型コロナウイルス感染者数が昨年11月から11週連続で増加しており、専門家は、流行の「第10波」だという見方を示している。

中でも気がかりなのは、能登半島地震が起きた石川県の感染者数が全国最多になったことだ。被災地で感染が拡大すれば、復旧や復興、生活再建の妨げとなりかねない。

避難生活を送る約1万3千人はもちろん、被災者を支える自治体関係者やボランティアにも注意を促す必要がある。政府は新型コロナを含むあらゆる感染症が広がらないよう適切な情報発信に努めるべきである。

新型コロナ患者が日本で発生して5年目に入った。現在はオミクロン型の一種で感染力の高い「JN・1」と呼ばれるタイプが増えている。新型コロナの感染症法上の位置づけは既に5類に引き下げられているが、高齢者らの重症化リスクが大きい点に変わりはない。

厚生労働省によると、全国約5千の定点医療機関に報告された最新の新規感染者数は週7万9605人だった。1医療機関当たりの患者数は前週比1・08倍の16・15人である。

そうした中で、都道府県別で全国最多の石川県は24・52人となった。ただし、ここには能登半島北部の一部が含まれていない。被災地においても新型コロナなどの感染が報告されていることを踏まえれば、県内の実態はこの数字よりも深刻だと考えて対処すべきだろう。

長引く避難生活で体力を消耗している被災者にとって、新型コロナが重症化する懸念は特に大きい。ただでさえ被災で医療体制が脆弱(ぜいじゃく)化する中、感染がさらに広がればどうなるか。そういう点を含めて備えを検討しておくことが肝要である。

警戒が必要な点ではインフルエンザも同様だ。インフルエンザは4週連続で全国の患者数が増えている。足元で感染拡大が特に目立つのは福岡県や沖縄県などの九州以南だが、被災地においても、感染拡大への備えを怠れない。

新型コロナもインフルエンザも基本的な感染対策は変わらない。マスクや手洗い、換気を改めて徹底することが重要だ。新型コロナの流行下で体得した感染症予防の習慣を続けたい。今シーズンにワクチンを接種していない高齢者は、接種を検討することも一案である。