空き家対策 地域再生への「資源」に(2024年2月8日配信『東京新聞』)

 国が空き家対策に本腰を入れ始めた。倒壊の恐れがある空き家への税制優遇をなくしたり、商業施設などへの建て替えを促したりする改正空き家対策特別措置法が昨年12月に施行された。放置された空き家は、種々のリスクから周辺地域の価値まで下げかねない。市区町村はこれを機に、空き家を地域再生の「資源」として活用する策を打ち出してほしい。
 賃貸、売却用や別荘などを除いた居住見込みのない空き家は全国に349万戸。この20年で倍増したが、今後も加速度的に増加する見込みという。「ごみ屋敷」化したり、災害時に倒壊、延焼するなど周辺に悪影響をもたらすことも危惧される。長期の空き家の存在が周辺の不動産価格を押し下げるとの研究報告もある。
 特措法の改正は迅速な対応を促す狙いだ。土地の固定資産税は空き家でも住宅が立っていれば原則6分の1に減額されるが、今後、老朽化が目立つ空き家は、市区町村の指導や勧告を経て、その特例措置が取り消される。一方、飲食店や宿泊施設などの建設が法的に制限されている場所でも、市区町村の計画を踏まえて、空き家からの転用が特別に可能になった。
 4月施行の改正不動産登記法も後押ししそうだ。空き家は所有者の没後、子や孫らが放置するケースが多い。不動産の登記は義務ではないため、行政が対策に乗り出そうにも所有者が分からないことも少なくなかった。改正法は相続人に登記を義務づけ、3年以内に手続きをしないと過料を科す。
 何から手を付けていいか分からない人もいよう。例えば、大手企業や東京大が立ち上げた「全国空き家対策コンソーシアム」のように、相続から改修、解体、売却などあらゆる空き家問題に一括対応してくれる組織も生まれている。
 市区町村には攻めの姿勢で空き家を活用する知恵を求めたい。子ども食堂やお年寄り向けカフェ、都心と地方の「二地域居住」や移住者向けの住宅、シェアオフィスなど移住、観光、子育て施策などとも連携させ、街の再生や活性化を図る道を模索してほしい。
 自治体が運営する「空き家バンク」は概して情報量が少ない。市区町村がNPO法人や企業を「支援法人」に指定して連携する仕組みも今回の特措法改正に伴い始まっている。市民や民間の力も借りて空き家取引を活発にしたい。