兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑などが文書で告発された問題で、県議会調査特別委員会(百条委員会)が25日開かれ、知事選後初の証人尋問が行われた。県幹部ら3人が証人として出頭したが、斎藤氏は欠席。斎藤氏の尋問日程は今後調整するが、現段階でめどは立っていない。知事選では県議会や百条委への批判が強まり、インターネット上では委員への誹謗(ひぼう)中傷などが相次いだ。委員の一人は議員辞職に追い込まれたが、ほかの委員らは「調査が萎縮してはならない」との思いを強めている。
■優勝パレード疑惑で尋問
この日の百条委では、昨年11月のプロ野球阪神・オリックス優勝パレードの企業協賛金を信用金庫に出してもらう見返りに、補助金を増額して還流したとされる疑惑などについて尋問。証人3人のうち尋問が公開されたのは当時の財務部長のみで、インターネット中継はなかった。
終了後、委員長の奥谷謙一県議が記者会見し、斎藤氏への証人尋問など次回の開催日程は未定だと説明。調査結果は年内にまとめる予定だったが、知事選の影響などにより来年にずれ込む見通しを示した。会見後、産経新聞の取材に「誹謗中傷はあったが、疑惑の真相解明に努めるという姿勢を崩さずに進めていきたい」と強調した。
斎藤氏が返り咲きを果たした今回の選挙戦。奥谷氏は立候補者の一人だった政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏から、斎藤氏を告発した男性の死亡原因を隠蔽(いんぺい)したなどとする内容を交流サイト(SNS)に投稿されたほか、自宅兼事務所前で激しい口調で演説され、危険を感じて家族を避難させるなどしたという。
今年6月に設置された百条委では、文書に記載された斎藤氏らに関する7項目の疑惑などを調査。斎藤氏への2度の証人尋問も行われ、その際の斎藤氏の対応を問題視した議会が斎藤氏に対する不信任案を全会一致で可決した。斎藤氏は失職し、今回の出直し選挙となったが、こうした経緯もSNSでは批判の対象となった。
ある委員はSNSだけでなく、自宅や事務所に電話やメールで知らない人からの抗議が多く届いた。「斎藤氏は文書問題について真正面から説明しようとしなかった。来年度予算の編成を託すわけにはいかないと考えた」と辞職を求めた理由を述べ、「萎縮してしまう委員がいるかもしれないが、信念を持って調査を最後までやり切るのが私たちの務めだ」と語る。
■中間報告出していれば…
一方、別の委員は、調査が終了していない段階で不信任決議に至った判断について、「『百条委員会は噓ばかり』などという事実と異なる情報が飛び交った。中間報告を出すなどしていれば、そうはならなかったかもしれない」と反省を口にする。
この委員は「今でも1日10件程度、『百条委員会の調査は止めろ』『議員辞職しろ』などというメールやSNSの書き込みがある」と明かしつつ、「信頼される結論を百条委で出していくだけだ」と話した。(喜田あゆみ、小林宏之)