静岡地検の入る庁舎=水戸健一撮影
静岡県清水市(現静岡市)で一家4人が殺害された事件を巡り、袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)で無罪判決が確定したことを受け、静岡地検の山田英夫検事正が近く袴田さんに直接謝罪する意向であることが関係者への取材で判明した。27日にも浜松市の袴田さん宅を訪問する。
関係者によると、山田検事正は裁判が長期化したことをわびた上で、検事総長談話について、袴田さんを犯人視する意図はなかったとの説明をするとみられる。検察側から弁護団には既に謝罪する意向が伝えられたという。
事件は1966年に発生。袴田さんは逮捕・起訴されて死刑判決を受けたが、2014年に第2次再審請求審で静岡地裁が再審の開始を決定し、今年9月、静岡地裁が無罪判決を言い渡した。静岡地検は10月9日に上訴権を放棄して再審無罪が確定。同21日には、県警の津田隆好本部長が袴田さんに謝罪している。【丘絢太】
9月の静岡地裁の無罪判決では、捜査機関による証拠の 捏造ねつぞう が認定された。これに対し、畝本直美検事総長は控訴を断念した際の談話で、「判決は到底承服できないもので、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容だ」とした一方、「袴田さんが結果として長期間、不安定な状況にあったことを検察としても申し訳なく思う」としていた。
1966年に静岡県のみそ製造会社専務一家4人が殺害された事件で袴田巌さん(88)の再審無罪が確定したことを受け、静岡地検の山田英夫検事正が近く袴田さんに直接謝罪する方針を固めたことが20日、関係者への取材で分かった。
畝本直美検事総長は控訴断念を表明した談話で「結果として相当な長期間にわたり、法的地位が不安定な状況に置かれた。申し訳なく思う」としていた。
袴田巌さん
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件を巡り、静岡地検の山田英夫検事正が近く、静岡地裁のやり直しの裁判(再審)で無罪判決が確定した袴田巌さん(88)に直接謝罪する方針であることが20日、関係者への取材で分かった。27日にも浜松市内にある袴田さんの自宅を訪ねる方向で調整している。
静岡地裁は9月の再審無罪判決で、捜査機関による証拠捏造(ねつぞう)があったと認定した。畝本直美検事総長は控訴断念に際して、捏造が認定されたことに「強い不満」を表明。判決理由に多くの問題を含んでいるとして「到底承服できない」と反発し、上級審の判断を仰ぐ内容だったと主張した。これに対し、弁護団は袴田さんを犯人視していると反発し、談話を撤回するよう求めていた。
関係者によると、山田検事正は袴田さんへの謝罪の場で、犯人視はしていないと伝える意向とされる。
袴田さんは1980年に死刑が確定した。2023年に再審開始が決まり、同年10月に再審が始まった。地検は有罪立証を維持して改めて死刑を求刑したが、地裁は9月の判決で袴田さんに無罪を言い渡した。