ふぞろいの…(2024年11月17日『佐賀新聞』-「有明抄」)

キャプチャ2
 名作テレビドラマ『ふぞろいの林(りん)檎(ご)たち』で、恋や将来に悩むヒロインを演じたのは手塚理美さん、石原真理子さん。それにもう一人、ぽっちゃりした中島唱子(しょうこ)さんがいた。見た目にコンプレックスを抱えた有名女子大のお嬢さまという役どころ
キャプチャ
 
キャプチャ
◆中島さんは所属する劇団の勧めでオーディションを受けた。1次審査は2分間の自己PR。趣味も特技もない。当時アルバイトで鍛えた、たこ焼きを丸く焼く技を身ぶり手ぶりで披露したら大うけ。難なく合格した
◆本人には知らされていなかったが、オーディションは「容貌の不自由な人募集します」だった。中島さんの合格を伝えるスポーツ紙の見出しは〈ブスのオーディションで1位〉。買い占めたその新聞に囲まれて、母が台所で泣いていた
◆今では考えられないような昭和の芸能界の悪ノリだが、傷ついた中島さんを救ったのは、脚本を手がけた山田太一さんの言葉だったという。「コンプレックスのない人間はつまらない。それが人を輝かせるエネルギーになる」と
宝塚音楽学校が来年の募集から「容姿端麗」を問わなくなるという。上下関係が厳しく死者まで出した歌劇団も時代の変化を迫られている。一方で、近ごろは世間がうるさいから本心は口にしない、という厄介な風潮もはびこる。「ふぞろいのタカラジェンヌ」ではダメですか?(桑)