躍進の原動力 20代・30代から高い支持
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一方で最も議席の”割合“を伸ばしたのが、玉木代表率いる国民民主党だった。選挙でのキャッチフレーズは「手取りを増やす」。有権者の支持を集めた結果として、議席は選挙前の7議席から4倍の28議席に。政党支持率は、2020年の結党以来の一桁支持率から、一気に先月比8倍の10.1%まで伸びた。
【政党支持率】(カッコ内は先月)
自民:25.8%(34.3)
立憲:13.7%(7.3)
国民:10.1%(1.3)
維新:5.3%(4.0)
公明:3.7%(2.6)
共産:3.5%(2.1)
参政:3.0%(0.3)
れいわ:2.8%(1.1)
保守:1.6%(今回選挙で政党要件獲得)
社民:0.4%(0.2)
【政党支持率 20代以下・30代】(上位3政党)
20代以下 30代
1.国民:14.9% 自民:14.8%
2.立憲:13.5% 国民:12.5%
3.自民:12.5% 立憲:11.4%
「時代が見つけてくれた」国民民主
この躍進に玉木代表は、フジテレビの取材に対して選挙後こう述べている「時代が見つけてくれたところもあった。民間の努力で賃金が上がっても結局、税金・保険料が高くて、なんだかちっとも豊かになっていないじゃないか、訴え続けてきた『手取りを増やす』と訴え続けてきた政策が、ようやく注目された」との認識だ。
実際「手取りを増やす」政策として選挙で全面に掲げた政策に「103万円の壁」を178万円に引き上げるという政策がいま注目されている。有権者に聞くと「引き上げるべき」が77.2%と圧倒、「引き上げなくて良い」は16.6%にとどまった。
「103万円の壁」とは、パートやアルバイトなどで働く人が、年収が103万円を超えると、所得税の課税対象となること。103万円を超えた場合、一定額の収入を超えるまで働かないと、逆に手取りが減るため、「働き控え」を招いているとされる年収額だ。
玉木代表は、103万円となっている非課税枠(=基礎控除などの合計額)を178万円まで引き上げることを選挙に掲げた。この基礎控除などの引き上げは、実はパート・アルバイトの「手取りを増やす」だけではなく、年収200万、300万、それ以上など、働き控えの問題が指摘されない年収の働く人にとっても、非課税枠が広がるため、手取りが増えることになる。
「103万円の壁引き上げ」については、パートやアルバイトなどで働く割合が多いとされる20代以下で「引き上げるべき」80.9%、60代で84.6%と賛成が8割を超えた。また、常勤の働き方が比較的多いとされる30代~50代でも「引き上げるべき」との答えが7割半ばから後半の高い数字となった。
ただし、この政策について政府は、国民民主党の訴え通り178万円に引き上げた場合は、税収が7.6兆円減少するとして、財源の問題があると指摘するほか、収入が多い人ほど、減税額が大きくなる問題点も指摘している。
玉木代表も、こうした指摘に対し「税収が減る問題はご指摘されている通り。ただし、裏返せば、同じ額が皆さんの手取りが増えることになる、消費に回っていく」と訴えるほか、「収入が多い人ほど『減税額』は大きくなるが、『減税率』は所得が低い人ほど大きい、考え方次第だ」と答えている。
【103万円の壁について】
引き上げるべき 77.2%
引き上げなくて良い 16.6%
【103万円の壁について・年代別】
引き上げるべき
20代以下 80.9%
30代 79.1%
40代 77.7%
50代 74.1%
60代 84.6%
70代以上 72.5%
過半数勢力の安定政権より政策実現
選挙の結果、自民+公明の議席は215議席に落ち込んだ。衆議院(総議席465)の過半数となる233議席まで、18議席届かなかった。石破政権は、与党単独で予算を成立させることができない上、他野党が一丸となって内閣不信任案に賛成すれば、即座に内閣総辞職に追い込まれる不安定な状況にある。
国民民主党について「自民・公明とともに与党の立場」を求める声は9.5%、「これまでどおり野党の立場」は21.9%、「政策ごとに、与党に賛成・反対の立場」を求める意見が圧倒的に多い65.1%となった。
これを与野党それぞれ第一党の、自民・立憲の政党支持層ごとにみると、「政策ごとに、与党に賛成・反対の立場」と答えたのは、「自民支持層」63.2%、「立憲支持層」51.1%にとどまり、「国民民主支持層」83.9%となった。
注目すべき点は、自民層、立憲層でも最も多かったのが「政策ごとに、与党に賛成・反対の立場」を望む声だと言うことだ。
有権者は過半数議席を得た政権の安定よりも、有意義な政策であれば実現する政治枠組みを望んでいる結果といえる。野党連合でもない、与党一辺倒でもない、「や」と「よ」の間で是々非々の「ゆ」党の立場が望ましいとの意見となった。
【国民民主党の今後の対応】
自公+国民で与党 9.5%
これまで通り野党 21.9%
政策ごとに、与党に賛否 65.1%
【国民民主党の今後の対応 支持政党別】
自民 立憲 国民
自公+国民で与党 20.5% 2.9% 1.9%
これまで通り野党 14.2% 42.6% 13.5%
政策ごと与党に賛否 63.2% 51.1% 83.9%
早速国会では、「103万円の壁」引き上げについて、国民民主と自民、国民民主と立憲という幹部協議が始まっている。国民民主党が、今後、年末の税制改正では「103万円の壁」引き上げについて自民党と交渉し、一方で「政治とカネ」をめぐっては、立憲など野党とも協議して自民党を牽制しつつ、それぞれ政策の衆院をめざすことなどが考えられる。
「玉木雄一郎 総理大臣」の可能性は
国会では、11日に開かれる特別国会で、衆院選での議員入れ替えを受けた総理大臣指名選挙が行われる。いずれも過半数の議席を持つ勢力がないため、自民・立憲の国民民主をめぐる綱引きの第一ラウンドとなる。これに対し玉木代表は、総理大臣指名で国民民主党は「玉木雄一郎と書く」としている。
図:首相指名選挙 ふさわしい人
【首相指名選挙 ふさわしい人】
自民・石破総裁 46.1%
立憲・野田代表 17.4%
国民・玉木代表 10.2%
維新・馬場代表 2.7%
立憲野田代表、国民玉木代表とも、政党支持率に近い数字となった一方、自民石破総裁がふさわしいとする声が突出する結果となった。別の質問で、与党が過半数割れした選挙結果を受けて、石破氏が総理を続投してよいか、交代するべきかを聞いた質問でも「続投して良い」55.3%、「交代するべき」36.5%と、世論は石破政権続投の声が高い結果となった。
実際、首相指名選挙の見通しも、1回目の投票では過半数を得る候補がおらず、議員数の多い順に、自民石破総裁、立憲野田代表の1位、2位による決選投票の結果、石破首相が選出される見通しが濃厚だ。
【石破茂首相は続投か交代か】
続投して良い 55.3%
交代するべき 36.5%
ここで、玉木代表の言う、総理大臣には「玉木雄一郎と書く」との立場について、国民民主党支持層で見てみると、首相指名選挙でふさわしい人「玉木代表」49.3%、「石破総裁」33.2%、「立憲野田代表」5.6%、「維新馬場代表」0.0%、その他、となり躍進した国民民主党支持層の中でも、「玉木総理」を押す声は半分にとどまった。
【首相指名選挙 ふさわしい人 国民民主支持層】
国民玉木代表 49.3%
自民石破総裁 33.2%
立憲野田代表 5.6%
維新馬場代表 0.0%
玉木代表は選挙後「最も欲しいのは、ポストではなく政策実現」と繰り返し述べている。自公+国民で過半数勢力を形成した場合、玉木代表は閣僚での処遇などが得られるが、選挙で掲げた「103万円の壁引き上げ」やガソリン値下げにつながる「トリガー条項の凍結解除」などに自民党が応じる優先度が下がる。
こうした状況は、来年夏に予定される参議院まで続くとみられる。「ゆ」党として国民民主党が、有権者の望む政策を課題ごとに実現するのか、そうではなく、過半数勢力がないことで「決められない国会」の政争に陥るのか、この半年の政策決定をみて、有権者の判断が参院選で改めて下されることになる。
西垣壮一郎