「党派が違っても一緒にやっていく姿勢を国民に理解されるようにする」。首相は28日、党本部で記者会見し、野党の政策であっても取り込んでいく考えを強調して秋波を送った。
◆自公だけでは予算案・法案通せず
首相が柔軟な態度に転じたのは過半数割れして、予算案や法案を与党だけで通せなくなったからだ。自民、公明両党は215議席にとどまり、非公認となった裏金議員ら与党系無所属の6人を追加公認しても221議席。28議席の国民を連立に引き込んで249議席と半数を超える状況だ。
◆立民・国民、それぞれ連合・芳野会長と対談
立民は50議席増の148議席に伸ばしたものの、維新や国民と合わせても214議席と自公の議席を下回る。政権交代には9議席のれいわ新選組や、8議席の共産党のほか、社民党、野党系無所属を含め、より多くの党との連携が欠かせない。
野田佳彦代表は支援団体の連合の芳野友子会長に「特別国会に向け、各党と誠意をもって対応する」と報告。同じく連合を支援団体とする国民の玉木雄一郎代表も芳野氏と会い、自民、公明両党との連立政権に参画する考えはないとしつつも、各党との政策協議には応じる意向を示しており、駆け引きが本格化した。
◆衆院選投票の10月27日から30日以内に
首相指名選挙を行う特別国会は投票日から30日以内に召集される。2017年と21年の衆院選ではいずれも、投票日から10日後に首相が選ばれたが、自民が敗北して政権交代した09年衆院選では、首相指名まで17日かかった。11月以降はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や25年度予算編成を控え、時間的な余裕はあまりない。自民幹部は「選挙で伸びた野党は自民と組みたくないと考えるのが普通だ」と交渉の難航を懸念する。
玉木氏は民放番組で、与党過半数割れに関して「対決型から合意形成する国会に変えていくきっかけになれば」と指摘し、野党の政策実現につなげていく考えを表明。共産の田村智子委員長は会見で「企業・団体献金の廃止や選択的夫婦別姓の実現へ扉を開くことができるのではないか」と述べ、これまで自民の反対で進まなかった課題の解決に期待感を示した。
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