石井啓一氏
公明党は公示前の32議席を割り込む24議席という惨憺(さんたん)たる結果になった。中でも、最大の痛恨事は石井啓一代表(66)の落選である。代表の落選は15年前の太田昭宏氏以来で、組織にも激震が走った。最大の敗因は浅はかな皮算用にあったようで――。
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公明党の機関紙「公明新聞」は投開票当日の10月27日、小選挙区の候補者11名の顔を1面にずらりと並べた。その表情はみな、判で押したように同じ。眉をつり上げて、口を大きく開けている。学会員に向けて、必死さをアピールするお家芸だが、今回だけは演出でも偽りでもなかったか。
政治部デスクが言う。
「11名は全員、比例重複の退路を断っていたのですが、事前の調査も自民党の裏金問題のあおりを受けて極めて厳しいものでした」
バーター取引
結果、11名中当選者はわずか4名。「常勝関西」とうたわれた関西の6選挙区でも、維新が公明との協調路線を対立路線に転じ、公明党は大阪府内の4選挙区をすべて失った。だが、一番の痛手は埼玉14区から出馬した石井氏の落選である。
「石井氏は当選10回を数えますが、初当選時以外はすべて比例区での選出。今回、14区には落下傘として臨みました」(前出の政治部デスク)
つまり、地盤のない中での選挙戦だったのだが、
「13区に移動した三ッ林氏に公明党が推薦を出したのは、石井氏が三ッ林氏から14区での選挙支援を受けるためです」
自身の選挙のために、裏金議員である三ッ林氏にバーター取引を持ちかけたというわけである。しかし、結果は両者ともに落選。なぜ、こんなことになったのだろう。
背に腹は代えられない
地元の自民党市議が声を潜めて言う。
「13区の学会員は裏金問題の三ッ林氏にアレルギーがあったでしょうし、逆に14区の自民党員もなじみのない公明党の代表を素直に応援できなかった。一般の自民党支持者には三ッ林氏と石井氏のバーターなんて言われても違和感があるでしょう。地元市議だって、石井さんを支援するために一所懸命動いたのかといえば、誰も本気ではやっていません」
ジャーナリストの乙骨正生氏が言う。
「埼玉の学会地域幹部に、裏金候補に推薦を出したことについて“公明党は政界浄化の党ではなかったのか”と聞きました。すると、“三ッ林の票をもらわなければ勝てない。背に腹は代えられないんだ”などという答えが返ってきた。ですが、こういうことを続けていくと、学会内部で疑問や矛盾の声が出る。それがひいては、組織の弱体化につながります」
裏金候補とのバーターが、集票マシーンの力を鈍らせたとみる。
石井氏の落選確定が判明したのは、投開票日から日付をまたいだ28日午前1時ごろ。支援者の姿もまばらな埼玉県草加市の選挙事務所で、ある党関係者は目に涙を浮かべながら、
「裏金問題の批判は大きかったですが自民党のみならず、与党に対して信任が得られなかったのでしょう」
と語った。連立を組む友党のトップの落選と交代。それはまた、石破政権を苦しめずにはおくまい。
「週刊新潮」2024年11月7日号 掲載
公明党は新たな代表に斉藤鉄夫国土交通相(72)を起用する方針を固めた。衆院選で落選し、代表辞任を表明した石井啓一氏(66)の後任。党の再建を急ぐため、世代交代よりベテランの安定感を重視した。就任に伴い、斉藤氏は国交相を退任する意向。複数の関係者が2日、明らかにした。
7日の中央幹事会で内定し、9日の臨時党大会で正式に選出する運び。公明は第2次石破内閣の発足を前提に、国交相人事について調整を進める。新たな執行部体制に関しては、西田実仁幹事長(62)は留任する方向となっている。