地下鉄サリン事件、真珠湾攻撃、ジョン・レノン射殺事件、ヒトラー内閣成立…“事件"がいつも月曜日に起きるのはなぜなのか――てれびのスキマ「テレビ健康診断」(2024年10月21日『文春オンライン』)

キャプチャ
※写真はイメージ ©AFLO
「雨の日と月曜日はいつも憂鬱」
 カーペンターズがそんな風に歌った「Rainy Days and Mondays」からこの日の『映像の世紀バタフライエフェクト』は始まった。「バタフライエフェクト」とは「蝶の羽ばたきが、巡り巡って竜巻を起こす」、つまり、ひとりひとりのささやかな行為が、時代を越えて大きな出来事を引き起こすということ。そうした観点から歴史を改めて見つめ直していくシリーズだ。そのキーワードの立て方や切り口が大胆かつ鮮烈で、これがあれにつながってたのか! と驚くことが少なくない。
 この日は、そんな切り口の妙が極まった回だった。そのテーマは「月曜日」。フリーランスになって曜日感覚が乏しくなった僕にとっては、週末滞り気味な編集者からのメールの返事が多めに来る日くらいの認識になったが、いまだに会社員時代に感じた憂鬱な気分も漠然と残っている。
 番組では1979年1月29日の月曜日、サンディエゴ銃乱射事件を起こした当時16歳の少女ブレンダ・スペンサーをひとつの軸にして進行していく。彼女は小学校で凶行に及んだあと、自宅に立てこもった。そのとき、新聞記者が家に電話して動機を聞き出した。そのとき、彼女はこう答えたという(本人は覚えていない)。
「I don't like Mondays」
 月曜日に起きた“事件"として真っ先に思い浮かべるのは、それが名前にもついた1987年の世界的株価大暴落「ブラック・マンデー」だろう。だが、それだけではもちろんない。
 ヒトラー内閣が成立したのも真珠湾攻撃も、ジョン・レノン射殺事件が起きたのも月曜日だった。そして、オウム真理教が引き起こした地下鉄サリン事件も連休の谷間の月曜日に起きた。救助に向かった自衛隊員は、阪神・淡路大震災への部隊派遣など激務が続いていたため、この日、束の間の統一代休日だったという。
「月曜日」という切り口でこんなに興味深いものができるのかと感心しているところで最後に“オチ"が用意されていた。番組には視聴者から様々な意見が寄せられる。その中にこんなものがあるという。
「月曜日に見るには重い」「月曜日から暗い気持ちになる」
 けれど、「希望」の物語も紡いでいると、「ベルリンの壁」崩壊を描いた回を例に出し、そのきっかけをつくった「月曜デモ」を紹介して締めくくった。ちなみにこの翌週のテーマは分断を象徴する「壁」。ベルリンの壁崩壊時には16だった壁が現在は78にまで増えたという、あまりにも重苦しいものだった。けれど、確かに見て知るべき内容だ。それが月曜日である必要はないかもしれないけれど。
NHK総合 月 22:00~
てれびのスキマ週刊文春 2024年10月24日号
キャプチャ