【編集部解説】衆院選2024の争点③安全保障&社会保障/年金どうなる?安全保障と社会保障の争点を徹底解説!各党のスタンスは?(2024年10月21日『選挙ドットコム』) 

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【編集部解説】衆院選2024の争点③安全保障&社会保障/年金どうなる?安全保障と社会保障の争点を徹底解説!各党のスタンスは?
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2024年10月20日に公開された動画では、安全保障と社会保障に関する衆院選の争点について選挙ドットコムの鈴木邦和編集長が解説。各党に行ったアンケートの結果をもとに各党のスタンスも比較しました。
【このトピックのポイント】
日米地位協定の見直しはいずれの政党も前向き。衆院選後に議論が進展するか
・防衛費増額に伴う増税に野党はいずれも反対するも、増額そのものについては意見が分かれる
・高齢者の医療費の自己負担割合と公的年金の問題は社会構造の変化のなかで避けて通れない議論
【安全保障】日米地位協定見直しと防衛費増額に伴う増税
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【安全保障】日米地位協定見直しと防衛費増額に伴う増税
鈴木編集長が衆院選の争点として最初に挙げたのは、日米地位協定の見直しです。
日米地位協定は日本における米軍の取り扱いについて包括的に定めた協定で、1960年に日米間で締結されました。
この協定によって、公務中の米軍関係者が日本で刑事犯罪を起こしても日本の法律が適用されません。そのため、特に沖縄での米軍兵士による犯罪が十分に裁かれていないのではとの指摘があります。
一方で、日本の司法制度下では容疑者の取り調べに弁護士の立会いがありません。そういった点が米軍兵士の司法に対する不信感につながっており、アメリカからは日本の司法制度をグローバルスタンダードに合わせるべきとの声もあります。
自民党はこのテーマに対し消極的な姿勢を続けてきましたが、石破茂総理は総裁選期間中から日米地位協定の見直しに言及。鈴木編集長は「石破さんが自民党の総裁としてこれを掲げたというのは大きなターニングポイントだと思います」とコメントしました。
日米地位協定の見直しなどについて各党にアンケートを行ったところ、自由民主党公明党は石破総理の考えを反映して「やや賛成」と回答。みんなでつくる党は「やや賛成」で、ほかの政党はすべて「賛成」との回答でした。
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日米地位協定の改定は見直すべきとの方針が一致しているが……?
進め方や温度差に違いはあっても、いずれの政党も「見直すべき」との考えは一致しているようです。
鈴木編集長「もともと日米地位協定の見直しは野党がずっと主張してきたテーマですので、そこに今回は自民党の考え方が近づいていったのかなという印象ですね」
司法制度の問題点については各党そこまで意見の違いは見られないものの、米軍基地のあり方については与野党で意見が分かれており、今後の議論のポイントとなりそうです。
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防衛費増額に伴う増税の是非。各党のスタンスは?
もう一つの争点として、鈴木編集長は防衛費増額に伴う増税の是非に言及。
防衛費を増額することについては2022年にすでに決定していますが、その財源についてはまだ結論が出ていません。
鈴木編集長はこの財源について、2022年の参院選で示すべきであったと指摘。「政策立案としては極めて無責任」とコメントしました。
防衛費増額に伴う増税については、自民党は「賛成」、公明党は「やや賛成」と回答。鈴木編集長は「与党らしく財源に対して一定の責任をもって取り組んでいくという考え方をされている」とコメントしました。
それ以外の政党はすべて「反対」ですが、その詳細はそれぞれ違いがあります。
まず、日本共産党・れいわ新選組社会民主党は防衛費の増額そのものに反対。そのほかの政党は防衛費の増額にはおおむね賛成しているものの、そのために増税を行う点については反対の意思を示しています。
立憲民主党は防衛費をGDP比2%という数字ありきの点に疑問を呈し、日本維新の会は政府の歳出を見直すことで財源を確保する考え方です。
国民民主党は経済成長に伴う税収増や外為特別会計からの税収入で十分賄えると主張しており、この考え方は一部自民党も取り入れています。
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高齢化が進行する中、高齢者の医療費の自己負担割合を増やすべきか?
これに対し日本維新の会は「賛成」、国民民主党と参政党は「やや賛成」との意見を示しています。
日本維新の会と国民民主党は、現役世代を支えることで高齢者の社会保障を維持するという考え方からこのような回答になったと思われます。
「中立」と答えたのは自民党公明党・みんなでつくる党。高齢者対策大綱で検討することを打ち出した自公がこのような回答になった理由について、鈴木編集長は「党内で議論が成熟しているわけではないし結論が出ているわけではない」と解説しました。
高齢者の生活困窮者の存在や現役世代の将来不安につながるおそれがあるといった理由から、立憲民主党は「やや反対」、共産党・れいわ新選組社民党は「反対」と回答しました。
この争点について鈴木編集長は「(高齢世代と現役世代の)二元論にしないほうがいい」とコメント。社会を維持するために負担のバランスは必要に応じて変えていく必要があり、高齢化が進む中で避けて通れない議論であると続けました。
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公的年金を積立方式に移行すべき?賛成、反対双方の意見は?
社会保障分野における衆院選の争点として鈴木編集長がふたつ目に挙げたのは、公的年金を積立方式に移行すべきかどうかという点です。
現在は現役世代が支払った年金を高齢世代が受け取る賦課方式が採用されています。積立方式に移行すると、自分が現役世代に払った年金を高齢世代になってから受け取る自己完結型の制度になります。
衆院選においては日本維新の会が積立方式への移行を公約として掲げており、アンケートでも積立方式への移行に対し「賛成」と回答しています。「やや賛成」と回答したのは国民民主党とみんなでつくる党です。
一方で自民党公明党立憲民主党共産党・れいわ新選組社民党は「反対」と回答。参政党は「中立」と回答しました。
日本維新の会が積立方式への移行を提起している背景として、少子高齢化が進むなかで賦課方式を続けると、世代間で格差が生じてしまうという点があります。実際に、今の現役世代は今の高齢世代よりも受け取れる年金は少なくなるという予測がされています。
一方で積立方式はインフレに弱く、支払いから受取までの間に物価が上がってもその上昇分は受取金額に反映されません。
賦課方式と積立方式は、どちらもメリット・デメリットがある制度で、どちらがより今の社会状況にマッチしていると見るかがそれぞれの政党の意見の分かれ目になっているようです。
また、賦課方式から積立方式に移行するには現役世代が現在の高齢世代を支えつつ自身の老後の年金を積み立てなければならないという問題があり、現実的に移行することはできないと指摘する政党もあります。
MC伊藤由佳莉「先送りされがちな問題になってしまうということなんですね」
ただ、様々なシミュレーションにおいて、今のままでは現役世代が年金だけで暮らしていくことは難しいのが実情。鈴木編集長は「ここにはやっぱりメスを入れていかなければいけない」とコメントするとともに、年金に対する認識を改める必要性にも言及しました。