<村山浩昭元裁判官>
「無罪らしくて、長かった」
村山さんは2014年、再審、裁判のやり直しを決めた裁判長でした。事件から1年2か月後に現場近くのみそタンクから見つかった血のついた「5点の衣類」。長年、袴田さんの犯行着衣とされてきました。
<小川秀世弁護士>
「カラー写真撮ってるんじゃないですか。カラーがあったのに、今までカラー写真は出ていなかったんですよ」
2010年代、裁判所の強い勧告を受け、検察が40年以上伏せてきた「5点の衣類」の鮮明なカラー写真を開示したのです。
<村山浩昭元裁判官>
「それはやはり驚きますよね。あっ、こういう色だったんだ。で、緑色のパンツって本当に緑色だな。証拠では緑のブリーフが出てるんですけど、その前の証拠はわからないんですよ、緑色かどうか。でも、本当にこんな緑色だったんだとわかりましたし」
衣類の「色」がはっきりとわかりました。
<村山浩昭元裁判官>
「血が、やはり赤みがかなり強いというのと、下着のシャツが白いんですよね、結構。これは率直に言って、1年以上みそに漬かってこういう色なのかというのは素人でも疑問に思うのではないかと思いますが」
2014年、村山さんを裁判長とする静岡地裁は再審開始と袴田さんの釈放を決定。「『5点の衣類』の血痕は1年以上もみそに漬かっていたにしては赤すぎる」として、捜査機関により、ねつ造された疑いがあるとしました。釈放の理由には、「拘置をこれ以上継続することは、耐え難いほど正義に反する」と極めて強い表現を使いました。
<村山浩昭元裁判官>
「実際にそう感じたんですよね長い年月、死刑というものを背負わせてきた。その証拠はこんな証拠だったんだ」
しかし、村山さんの決定に対し、検察が抗告。東京高裁は審理の末、再審開始を取り消しました。再び再審が認められ、無罪が確定するまでには10年がかかりました。
<村山浩昭元裁判官>
「袴田さんの場合は、取り消されることによって再審の裁判が遅れることは間違いない。その遅れが本当に大変なことになっちゃうのではないかなということは思っていましたし…」
村山さんは袴田さんの裁判に関わったことをきっかけに、検察による抗告の禁止と再審請求における証拠が開示されやすい仕組み作りを訴えています。