「別姓を選べれば結婚する、という若い世代は一定数いる」事実婚はアイデンティティーやキャリアの喪失避けるため(2024年10月19日『東京新聞』)

 
衆院選2024 選択的夫婦別姓を求めて〉
②別姓を理由に事実婚した戎光璃さん(26)に聞く
 愛着のある自分の名字を変えたくないので昨年、婚姻届は出さず、事実婚を選びました。「戎(えびす)」という格好いい名字にアイデンティティーを感じています。

◆相手にも無理に改姓させたくない

 2019年に、自分と同世代のZ世代に特化した企画やマーケティング支援の会社を起業しました。私が結婚で名字を変えるとなると、免許証やクレジットカードなどの名義変更に加え、代表としての会社のさまざまな書類の手続きもしなければならない。仕事のキャリアが途絶えたように見えてしまうのも嫌でした。周囲の女性起業家にも「別姓を選べないから事実婚にした」という人が増えていると感じます。
昨年、別姓を理由に事実婚をした戎光璃(えびす・ひかり)さん=東京都内で

昨年、別姓を理由に事実婚をした戎光璃(えびす・ひかり)さん=東京都内で

 もともとは、パートナーが名字を変える前提で婚姻届も準備していました。でも、親戚の意見も踏まえて2人で考え直し、提出は保留に。相手にも無理に改姓させたくないのです。
 今の民法では、結婚でどちらかが必ず姓を改めなければいけませんが、現実には改姓するのは女性が圧倒的多数。不便や不利益などが女性に偏っている事実があるので、希望する人は別姓にできるようにしてほしいと思います。

◆10年経った今も、まだ制度がないなんて…

 高校生の頃から、おぼろげに「結婚で名前を変えたくない」と思っていましたが「10年後には選択的夫婦別姓制度ができているだろう」と楽観視していました。ところが、今もまだ制度がないなんて…。
 9月の自民党総裁選で、小泉進次郎さんが選択的夫婦別姓制度を導入する法案を提出したいなどと発信し、関心が高まっていると感じます。衆院選でも候補者が制度導入に賛成かどうかをチェックしています。
 別姓を選べれば結婚する、という若い世代は一定数います。当事者が多くいる世代として、1日でも早く制度をつくってほしいと、政治家に伝えたいです。(聞き手・奥野斐)
  ◇
衆院選2024 選択的夫婦別姓を求めて〉
 選択的夫婦別姓制度の導入に向けた機運が高まっている。長年、自民党内の保守派議員の反対で導入が見送られてきたが、6月には自民党の有力な支援団体である経団連が早期導入を求める提言をし、9月の自民党総裁選でも争点に。なぜ導入を求めるのか。衆院選に合わせ、さまざまな立場から制度を求める声を伝える。